最後の卒論を紹介します。
高冷地での広葉樹に係る育苗技術の基礎資料を得るため、コナラ、クリに着目し初期成長特性を調査（試験Ⅰ）するとともに種子形状の違いが発芽・生育におよぼす影響を調査（試験Ⅱ）しています。
概 要
Ｙ本君：「種子形状の違いが発芽・生育に及ぼす影響」
１、試験に供したコナラ種子は2005年10月３～５日の間飯南町内の健全な母樹から採取し、クリ種子は2005年10月４・６日に中山間地域研究センター内に生育する４本の樹冠下に落下したものを採取した。採取後は水に浸水し、５日間冷蔵庫内で殺虫した。
また種子形状の違いは目視により大、中、小の３処理区に区分した。それぞれ30粒を無作為に抽出し、形状、重量を計測した。
播種は試験Ⅰ、Ⅱともコナラで10月７日、クリで10月11日に播種した。試験Ⅰでは両樹種とも幅1.0ｍの苗床に1.0㎡当たり80粒、合計で104粒播種した。繰り返しは３回とした。試験Ⅱでは試験Ⅰと同密度とし、各処理区当たりコナラで200粒、クリで104粒播種した。施肥は両試験区とも2005年10月３日基肥として化学肥料（Ｎ：Ｐ：Ｋ＝15:15:15）を12ｇ/㎡施用した。
調査は両試験とも、葉数を２週間、苗高を１ヶ月間隔で計測した。なお、最初の計測日は５月２日である。
コナラ、クリの種子形状
（コナラ）
大区 重量2.9ｇ 高さ2.1cm 幅1.5cm
中区 重量2.2ｇ 高さ1.8cm 幅1.3cm
小区 重量1.4ｇ 高さ1.6cm 幅1.1cm
（ク リ）
大区 重量8.8ｇ 高さ2.5cm 幅2.8cm
中区 重量5.8ｇ 高さ2,2cm 幅2.4cm
小区 重量4.2ｇ 高さ1.9cm 幅2.2cm
２、調査結果
（１）試験Ⅰ：飯南町におけるコナラ、クリ当年性実生苗の初期成長特性
コナラの平均発芽率は97.2％であった。吉野が里部で行った試験報告では70％である。このことから高冷地でも十分発芽することが判明した。また、クリの平均発芽率は60.2％であった。吉野が里部で行った試験報告では80％である。今回の試験では十分な発芽率に達しなかった。
コナラの成長過程については葉数では調査開始から10週までは５枚ほどで推移してきたが、その後急激に増加し10月には55枚となり、その後減少した。クリはほぼ一定の割合で増加し10月には20枚となり、その後減少した。
苗高についてはコナラでは葉数同様、２ヶ月後の７月２日から９月２日の２ヶ月間に以降急激な成長が認めら、その後は著しい成長は認められなかった。平均苗高は36cmに達した。クリは６月２日までの１ヶ月間で急激に成長し、その後成長が衰え、９月２日以降はほとんど成長は認められなかった。平均苗高は22cmであった。
本試験では追肥は行わなかった。この成長パターンは施肥による影響は考えられず、樹種特性である可能性が高い。したがって、コナラは７月～９月にかけて急成長する時期に、クリは５、６月に追肥を行うことで、より良い成長が期待できるものと考えられる。
（２）試験Ⅱ：種子形状が発芽・生育に及ぼす影響
コナラ・クリの種子形状別発芽率
（コナラ）
大区 90.0％
中区 68.3％
小区 68.3％
（ク リ）
大区 53.3％
中区 58.3％
小区 63.3％
コナラは大区が最も高く、中区、小区が同じ値となった。これは種子が大きいほど重量も重く、より多く養分が含んでいるためだと考えられる。一方クリは小区が最も高く、次いで中区、大区の順となった。今回の調査では種子が小さいほど発芽率が高く、コナラとは逆の結果を示したが原因を明らかにすることはできなかった。
コナラの平均苗高は大区と中区はほぼ同様な成長を示し、30cmに達したが、小区では８cmと小さかった。また、平均葉数も大区、中区は同様な増加傾向を示し、９月２日には35枚となったが小区では12枚であった。クリの平均苗高は大区が中区、小区に比べ大きく、中区と小区には大きな差は認められなかった。大区の平均苗高は31cmに達し、平均葉数は28m枚であった。このことから、コナラは大径と中径、クリは大径のみが育苗に利用できると考えられる。
本試験から、高冷地にある飯南町でもコナラは十分発芽、生長し、育苗が可能であることが明らかになった。育苗に当たっては、大径の種子を利用し、やむを得ず中継の種子を利用する場合は発芽率が低いので、まきつけ量を増やして利用することが望ましい。今回の試験ではクリの発芽率は不十分であったため、育苗に当たっては大径のものをまきつけ量を増やして利用することがよいものと思われる。
高冷地での広葉樹に係る育苗技術の基礎資料を得るため、コナラ、クリに着目し初期成長特性を調査（試験Ⅰ）するとともに種子形状の違いが発芽・生育におよぼす影響を調査（試験Ⅱ）しています。
概 要
Ｙ本君：「種子形状の違いが発芽・生育に及ぼす影響」
１、試験に供したコナラ種子は2005年10月３～５日の間飯南町内の健全な母樹から採取し、クリ種子は2005年10月４・６日に中山間地域研究センター内に生育する４本の樹冠下に落下したものを採取した。採取後は水に浸水し、５日間冷蔵庫内で殺虫した。
また種子形状の違いは目視により大、中、小の３処理区に区分した。それぞれ30粒を無作為に抽出し、形状、重量を計測した。
播種は試験Ⅰ、Ⅱともコナラで10月７日、クリで10月11日に播種した。試験Ⅰでは両樹種とも幅1.0ｍの苗床に1.0㎡当たり80粒、合計で104粒播種した。繰り返しは３回とした。試験Ⅱでは試験Ⅰと同密度とし、各処理区当たりコナラで200粒、クリで104粒播種した。施肥は両試験区とも2005年10月３日基肥として化学肥料（Ｎ：Ｐ：Ｋ＝15:15:15）を12ｇ/㎡施用した。
調査は両試験とも、葉数を２週間、苗高を１ヶ月間隔で計測した。なお、最初の計測日は５月２日である。
コナラ、クリの種子形状
（コナラ）
大区 重量2.9ｇ 高さ2.1cm 幅1.5cm
中区 重量2.2ｇ 高さ1.8cm 幅1.3cm
小区 重量1.4ｇ 高さ1.6cm 幅1.1cm
（ク リ）
大区 重量8.8ｇ 高さ2.5cm 幅2.8cm
中区 重量5.8ｇ 高さ2,2cm 幅2.4cm
小区 重量4.2ｇ 高さ1.9cm 幅2.2cm
２、調査結果
（１）試験Ⅰ：飯南町におけるコナラ、クリ当年性実生苗の初期成長特性
コナラの平均発芽率は97.2％であった。吉野が里部で行った試験報告では70％である。このことから高冷地でも十分発芽することが判明した。また、クリの平均発芽率は60.2％であった。吉野が里部で行った試験報告では80％である。今回の試験では十分な発芽率に達しなかった。
コナラの成長過程については葉数では調査開始から10週までは５枚ほどで推移してきたが、その後急激に増加し10月には55枚となり、その後減少した。クリはほぼ一定の割合で増加し10月には20枚となり、その後減少した。
苗高についてはコナラでは葉数同様、２ヶ月後の７月２日から９月２日の２ヶ月間に以降急激な成長が認めら、その後は著しい成長は認められなかった。平均苗高は36cmに達した。クリは６月２日までの１ヶ月間で急激に成長し、その後成長が衰え、９月２日以降はほとんど成長は認められなかった。平均苗高は22cmであった。
本試験では追肥は行わなかった。この成長パターンは施肥による影響は考えられず、樹種特性である可能性が高い。したがって、コナラは７月～９月にかけて急成長する時期に、クリは５、６月に追肥を行うことで、より良い成長が期待できるものと考えられる。
（２）試験Ⅱ：種子形状が発芽・生育に及ぼす影響
コナラ・クリの種子形状別発芽率
（コナラ）
大区 90.0％
中区 68.3％
小区 68.3％
（ク リ）
大区 53.3％
中区 58.3％
小区 63.3％
コナラは大区が最も高く、中区、小区が同じ値となった。これは種子が大きいほど重量も重く、より多く養分が含んでいるためだと考えられる。一方クリは小区が最も高く、次いで中区、大区の順となった。今回の調査では種子が小さいほど発芽率が高く、コナラとは逆の結果を示したが原因を明らかにすることはできなかった。
コナラの平均苗高は大区と中区はほぼ同様な成長を示し、30cmに達したが、小区では８cmと小さかった。また、平均葉数も大区、中区は同様な増加傾向を示し、９月２日には35枚となったが小区では12枚であった。クリの平均苗高は大区が中区、小区に比べ大きく、中区と小区には大きな差は認められなかった。大区の平均苗高は31cmに達し、平均葉数は28m枚であった。このことから、コナラは大径と中径、クリは大径のみが育苗に利用できると考えられる。
本試験から、高冷地にある飯南町でもコナラは十分発芽、生長し、育苗が可能であることが明らかになった。育苗に当たっては、大径の種子を利用し、やむを得ず中継の種子を利用する場合は発芽率が低いので、まきつけ量を増やして利用することが望ましい。今回の試験ではクリの発芽率は不十分であったため、育苗に当たっては大径のものをまきつけ量を増やして利用することがよいものと思われる。
