それは、
映画「しあわせのパン」の香織に似たようなきっかけでした。
県内の酪農家さんとお付き合いすることもなくフラれ、
悲しかったけれど、それでもなお、酪農を諦める気持ちにはなれませんでした。
「県内にはいない」と割り切り、思い立ったが吉日。
北海道へ旅立ちました。
飛行機に乗ったのは数十年ぶり。
出逢いは農家さんとの交流会でした。
畑屋さんも牛屋さんもみんな穏やかでいい人ばかり。
食料自給率120% おいしいものをたくさん食べました。
終了後、お手洗いに立ち寄っていたら、参加者のほとんどがレストランから退出してしまい、
一人とり残されたため、追いかけようと慌てていたところ、
レストランの出入り口にひとりの男性が待っていてくれていました。
(正確には、レストランに訪れた有名選手の写真を眺めていたご様子。)
あの時は、いい人だな、くらいにしか思っていなかったのに。
空港まで送ってくれたわずかな時間の中で、
北海道のこと、酪農のこと、好きな本のこと・・・
会話の声はよく聞こえるし楽しく話せる安心感に驚きつつ、
「牛舎、見せてください」って頼んだら、本当に連れて行ってくれてました。
彼の懐の広さは、
フラれたばかりでささくれていた私のココロをほぐし、
固く閉ざしていた扉をほんの少し開けてくれました。
ずっとずっと、夢を諦めないで良かった。
社会勉強の遠回りをして同期と比べたら遅れてしまったけど、
念願であった農家のお嫁に落ち着くかたちとなりました。