井上荒野,2019,あたしたち、海へ,新潮社.(10.25.24)
有夢と瑤子と海は幼馴染みの仲良し三人組。中学の合格祝いに買ってもらった自転車もお揃い、大好きなミュージシャンも同じリンド・リンディ。川沿いの街でずっと同じ風景を見ていくはずだった。だけど―。傷ついて、裏切って、追い詰められて…。大人には見えない、少女たちの孤独な魂にそっと寄り添う物語。
本作のテーマは、いじめ。
井上さんは、人間の陰湿で残酷な心理を描くのも巧い。
物語は、主に、主人公、有夢と瑤子それぞれの視点から展開していく。
井上さんが得意とする手法だ。
私立女子中学、スクールカーストのトップにいるルエカの命令により、有夢と瑤子は、親友、海のいじめに加担していく。
架空のミュージシャン、リンド・リンディの「ペルー」を唱和する有夢と瑤子。
終盤、「ペルーに行く」ことが、高層マンションから一緒に飛び降りることを意味することになるが、どんでん返しのハッピーエンドで終わる。
読み応えじゅうぶんの長編小説だ。