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本と音楽とねこと

風よ あらしよ

村山由佳,2020,風よ あらしよ,集英社.(9.26.2020)

 650ページを超える大作。
 村山由佳さんが作家生命をかけて書き上げたことが、この圧倒的な分量と、伊藤野枝たちがつい最近まで生きていたかのようなリアルで、細やかな描写、表現からわかる。
 瀬戸内寂聴さんの二部作で、伊藤野枝と同時代を生きた人々の群像は描きつくされたように思っていたが、本作は、史実にもとづきながらも、あくまでフィクションとして構成されており、これ以上ないというリアル感を醸成することに成功している。
 福岡・今宿の生家で育ち、甘粕正彦等に惨殺されるまでの野枝の挙手挙動、心情、発話は、実際におそらくこうであっただろうなと思わせられる、説得力あふれたものだ。
 文句なしの「評伝小説」である。

どんな恋愛小説もかなわない不滅の同志愛の物語。いま、蘇る伊藤野枝と大杉栄。震えがとまらない。
姜尚中さん(東京大学名誉教授)
ページが熱を帯びている。火照った肌の匂いがする。28年の生涯を疾走した伊藤野枝の、圧倒的な存在感。100年前の女たちの息遣いを、耳元に感じた。
小島慶子さん(エッセイスト)
時を超えて、伊藤野枝たちの情熱が昨日今日のことのように胸に迫り、これはむしろ未来の女たちに必要な物語だと思った。
島本理生さん(作家)
明治・大正を駆け抜けた、アナキストで婦人解放運動家の伊藤野枝。生涯で3人の男と〈結婚〉、7人の子を産み、関東大震災後に憲兵隊の甘粕正彦らの手により虐殺される――。その短くも熱情にあふれた人生が、野枝自身、そして2番目の夫でダダイストの辻潤、3番目の夫でかけがえのない同志・大杉栄、野枝を『青鞜』に招き入れた平塚らいてう、四角関係の果てに大杉を刺した神近市子らの眼差しを通して、鮮やかによみがえる。著者渾身の大作。
[主な登場人物]
伊藤野枝…婦人解放運動家。二十八年の生涯で三度〈結婚〉、七人の子を産む。
辻 潤…翻訳家。教師として野枝と出会い、恋愛関係に。
大杉 栄…アナキスト。妻と恋人がいながら野枝に強く惹かれていく。
平塚らいてう…野枝の手紙に心を動かされ『青鞜』に引き入れる。
神近市子…新聞記者。四角関係の果てに日蔭茶屋で大杉を刺す。
後藤新平…政治家。内務大臣、東京市長などを歴任。
甘粕正彦…憲兵大尉。関東大震災後、大杉・野枝らを捕縛。

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