まるで専門外のソーシャルメディアの論考を某社会学のテキストに執筆することとなり、めぼしい本はできるだけ目をとおすことにしてきたが、本書は思いもかけず収穫が多かった。本書が出版されたのは、スマートフォンの普及以前のことであり、考察の対象は、もっぱら携帯電話による通話とSMSによるメッセージにおかれている。しかし、モバイルコミュニケーションの浸透による、公共領域と私的領域の混交、私的世界が「携帯」されることによる公共性の分断と喪失といった問題は、ソーシャルメディア全盛期の現在にこそ考えるに値するものだ。つまらない会話分析は余計だったと思うが、有益な知見が散りばめられた一冊だ。
目次
第1部 モバイル・コミュニケーション:国家的・比較的観点
フィンランド:ある携帯電話文化
イスラエル:聖地での厚かましさとおしゃべり
イタリア:嘘と本当のステレオタイプ ほか
第2部 プライベート・トーク:人間関係と微細な行動
ノルウェーの携帯電話と利用したハイパー・コーディネーション
フィンランドにおける子どもと一〇代のモバイル文化
フランスにおける見せかけの親密さ ほか
第3部 パブリック・パフォーマンス:社会的な集団と構造
不在なる存在の挑戦
大衆社会から絶え間なき交信へ:社会的文脈における通信技術のモデル
携帯とノルウェーの一〇代の若者たち:アイデンティティ、ジェンダー、階級 ほか
世界で、人々はいかにして携帯電話を受容し、そして今、利用しているのか。来るべきユビキタス社会に向けて情報通信のビジネス、研究に携わる人の必読書。
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