解説で岩波明さんが指摘しているように、統合失調症の患者において、小林さんほど、思考や表現がギリギリのところで破綻せず、冷静に自らの妄想歴を追想できるのは珍しい。
回想される支離滅裂な妄想と繰り返される入退院の経験を読むのはかなりしんどいが、「なぜそう思う?」との疑問がどうしてもつきまとい、理解するのがなかなか困難な統合失調症当事者の経験に触れるのは、けっして無駄ではないだろう。
早稲田大学を出てアニメーション制作会社へ入ったごく普通の青年がいた。駆け出しながら人気アニメ作品の演出にも携わるようになったが、24歳のある日を境に、仕事場では突飛な大言壮語をし、新聞記事を勝手に自分宛のメッセージと感じ、また盗聴されている、毒を盛られるといった妄想を抱き始め…。四半世紀に亘る病の経過を患者本人が綴る稀有な闘病記にして、一つの青春記。
目次
第1章 兆候(一九六二年~一九八四年)
第2章 現実との闘い(一九八四年~一九八六年)
第3章 意識革命(一九八六年七月)
第4章 幻覚妄想(一九八六年七月二十五日~七月二十七日)
第5章 入院(一九八六年七月~十一月)
第6章 出発(一九八六年十一月~一九八八年十二月)
第7章 想像と妄想の狭間(一九八九年一月~十月)
第8章 躁病、そして再入院(一九八九年十月~十二月)
第9章 再出発(一九九〇年一月~一九九一年四月)
最終章 障害があっても(一九九一年~現在)
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