斎藤幸平,2022,ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた,KADOKAWA.(6.3.24)
ギグワーク、ワーカーズコープ、性教育、昆虫食、ジビエ、水俣、部落差別、フクシマ、アイヌ等をとおして、労働、人権、食料、環境等の問題を再考する一冊。
性教育についての考察に、なるほどと思った。
性教育とは正しい避妊や性被害への対処法を教えるものだと思っていたので、こうした事例の幅広さに驚いた。鶴田さんと徳永さんの2人に共通していた性教育のポイントは、身体の自尊感情を高めることで自己肯定感を得ていくことである。自尊感情が高ければ自分の体を守ろうとするし、また何かあったときも自分の言葉で親に伝えることができる。それに他人の体を尊重すれば、性加害をしてしまうリスクも抑えられるはずだ。一方、自己肯定感が低ければ、仮に知識があっても「自分の体なんてどうなってもいい」と自暴自棄になってしまうかもしれないし、他人も傷つけてしまう。
自尊感情を高めるためには、「見せない」「触らせない」という否定で教えるのではなく、「これで大切な箇所を守れるね、よかったね!」などと言ってあげるのが良いらしい。否定形ばかりだと、被害にあった時、自分に落ち度があったと責めてしまうことになり、被害の発覚を遅らせることになるそうだ。
(p.75)
斎藤さんの著作のなかでは、いちばんとっつきやすいように思う。
うちに閉じこもらずに、他者に出会うことが、「想像力欠乏症」を治すための方法である。だから、現場に行かなければならない。(「学び、変わる 未来のために あとがきに代えて」より)
理不尽に立ち向かう人、困っている人、明日の世界のために奮闘する人――統計やデータからは見えない、現場の「声」から未来を考える。
目次
第一章 社会の変化や違和感に向き合う
ウーバーイーツで配達してみた
どうなのテレワーク
京大タテカン文化考
メガヒット、あつ森をやってみた
5人で林業 ワーカーズコープに学ぶ
五輪の陰
男性メイクを考える
何をどう伝える? 子どもの性教育
第二章 気候変動の地球で
電力を考える
世界を救う? 昆虫食
未来の「切り札」? 培養肉
若者が起業 ジビエ業の現場
エコファッションを考える
レッツ! 脱プラ生活
「気候不正義」に異議 若者のスト
第三章 偏見を見直し公正な社会へ
差別にあえぐ外国人労働者たち
ミャンマーのためにできること
釡ケ崎で考える野宿者への差別
今も進行形、水俣病問題
水平社創立100年
石巻で考える持続可能な復興
福島・いわきで自分を見つめる
特別回 アイヌの今 感情に言葉を
学び、変わる 未来のために あとがきに代えて