イタリアにおける「南北問題」はつとに知られた事実であるが、パットナムは、それを、市民参加型共同体の伝統があるかないかの帰結として捉える。のちの著作群と同じく、よく考えぬかれた統計データが駆使されており、議論には、高い説明力、説得力がある。
19世紀の後半期、北部イタリアにおいて、「相互扶助協会」、農業協同組合、労働者協同組合、消費協同組合、協同農村金庫等のアソシエーションが組織され、それが強い社会、強い経済につながっていったという指摘は、とても興味深い。
国家と個人を媒介する「社会」の重要性を、ソーシャルキャピタルの伝統、蓄積と、市民社会における信頼の醸成という観点から明らかにした実り多い作品だ。
本書は、イタリアにおける州の研究を通じて、イタリア人の市民生活に関する根本的な疑問のいくつかを検討する。具体的にはイタリアの地方政府の公共政策におけるパフォーマンスを比較分析することで、高い地域にはそれなりの伝統、つまり市民的政治文化があり、結局のところそれがパフォーマンスを上げているとの結論にたどりつく。パフォーマンスの高い地域とされた、中部イタリアには数百年に及んだ共和政の伝統があった。北部イタリアはフランスやオーストリアの勢力に翻弄されることが多く、共同体主義が発達しなかったし、ローマ以南の地域では何世紀にもわたる征服王朝による封建的土地所有が地域社会の基礎にあったため、その根本に不信があるという。著者は、共同体主義の伝統がない地域では政治の改革は深まらないと指摘する。
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