ねこ好きでグロテスクな心理描写に目がないものには、垂涎の内容だ。桐野夏生が描く絶望的世界を超えそうでいて、人間を壊れる寸前のところで此岸につなぎ止める控えめなヒューマニズム、これがまたこの作家の人気の秘密なんだろう。
ようやく授かった子供を流産し、哀しみとともに暮らす中年夫婦のもとに一匹の仔猫が現れた。モンと名付けられた猫は、飼い主の夫婦や心に闇を抱えた少年に対して、不思議な存在感で寄り添う。まるで、すべてを見透かしているかのように。そして20年の歳月が過ぎ、モンは最期の日々を迎えていた…。「死」を厳かに受けいれ、命の限り生きる姿に熱いものがこみあげる。
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