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本と音楽とねこと

【名作】イノセントワールド【再読】

桜井亜美,1997,イノセントワールド,幻冬舎.(3.11.24)

 あらためて、スゴい小説だ。

 本作の筋立てについては、宮台真司さんが「解説」で要領よくとりまとめているので、それを引用しよう。(元は「朝日新聞」に掲載された記事。)

 その点でいえば、私が小説化を勧めた桜井亜美『イノセントワールド』の十七歳の主人公アミは、今日的イノセント=「世界の不受容」を象徴している。彼女は、親から見放された「無垢」な知的障害の兄タクヤと近親相姦の関係にある。彼を守るために売春で金を稼ぐ彼女は、やがて兄の子を妊娠。そして混乱のさなかにクスリを飲まされ集団レイプ・・・・・・。おぞましい筋立てだが、なぜか嫌悪感を感じない。その理由は、一人称で自らを語るアミが「世界を受け入れていない」からだろう。〝閉ざされた世界〟に棲むアミにとって、親も売春客もレイプする男たちも存在感の希薄な〝影絵〟にすぎない。
 さて、自分が体外受精の子であることを知ったアミは閉ざされた世界"からの出口を求めるかのように精子ドナーを探すが、尋ねあてたドナーとは行きずりのセックスをするだけ。しかしアミは、ドナーの男がそうだったように「世界を受け入れない者」たちが世界のあちこちに散在していることを知り、出口探しの旅から解脱。「世界の不受容」への確信犯ぶりを一層深めたところで話は終わる。そこに私は、「世界の汚れにまみれ」つつも「世界の受容をあくまで拒否する」ことが、「無垢」な兄を守り続けられる唯一の「成熟」の仕方だという高らかな宣言を聴く。(中略)
 オヤジをカモリ、徹底して戦略的に振る舞う現実の女子高生たちにとって、オヤジという存在は、「汚れ」かつ「世界を受容した者」の象徴だ。そのオヤジ相手に売春しまくる彼女たちは、「汚れ」てはいても「世界を受容してはいない」。その意味でイノセントな存在だ。「世界を受容していない」アミの「リアル」は、実は社会学的な意味で「現実」そのものである。
(pp.217-218.)

 援交、パパ活、、、呼び方は変わっても、からだ(のパーツ)かこころを売ってる点では同じで、売春は売春だ。

 わたしも、宮台さんと同じように、性虐待やレイプのトラウマを抱え、売春する女の存在に、とてもこころを痛めている。

 せめて、彼女たちが、アミのように、「世界を受容していない」、イノセント、無垢な存在であることを願おう。


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