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沈む日本を愛せますか?、政権交代とは何だったのか、政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない

 『沈む日本を愛せますか?』は、東日本大震災、福島原発事故が起こり、そして「悪夢のような第二次安倍政権」が成立する前に行われた対談で、内田樹、高橋源一郎に加えて渋谷陽一、この三人が放談の限りを尽くす。いま読んでも、めちゃくちゃおもしろい。
 そうか、小沢一郎は、植民地化されてきた東北人の怨念を背景にもつ「ナロードニキ」だったのか!
 稚拙な統治手法に幻滅しつつも、「まだ自公政権よりマシ」という明るい気分がある。その後、まさか、上記のようなことが起ころうとは、三人とも思いもしなかっただろう。(わたしもつゆほどにも思わなかった。)
 『政権交代とは何だったのか』は、民主党ブレーンでもあった筆者が、非常に厳しく、どこがどうまずかったのか、民主党政権の失敗を検証している。

「日本的理想主義とは、旧社会党に代表されるように、ユートピアを求め、現実を否定、拒絶する態度であった。しかしそれは、「政治とは悪さ加減の選択」という鉄則を無視し、ベストを求め、ベターを拒絶するあまり、かえって変化の芽を摘み、現実の固定化を助長するという帰結をもたらした。」(p.227.)

 民主党政権は、この理想主義と、野田佳彦、細野豪志、前原誠司。岡田克也等による、自民党世襲議員をも凌ぐ薄汚い現実主義とのあいだで迷走し、自壊した。
 『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』は、もう少し文章表現が巧みであれば、けっこう広く読まれたであろうに、と思うと、少し残念な書物だ。
 経済成長と少子化の克服を前提にした、「部分最適組織集合体モデル」は、自民党と経団連の所産であり、それから脱するには、経済の定常化、人口減少、環境負荷の軽減を前提とした社会モデルと、それを可能にする政権交代が必要だという趣旨には、賛同する。


内田樹・高橋源一郎,2014,沈む日本を愛せますか?,文藝春秋.(11.24.2020)

日本の政治には実体だけがあって言葉がない。政党としての政治理念がない自民党と、もう一つの自民党と化す民主党。この国の諸相と政治をめぐる病理に、稀代の論客ふたりが挑んだスリリングな対談集。本当の意味で戦後が終わった今、たそがれゆく国をどう受け入れ、愛することができるのだろうか―瞠目のヒントがここに。


山口二郎,2012,政権交代とは何だったのか,岩波書店.(11.24.2020)

政権交代への期待感は幻滅へと変わり、いまや政党政治に対する忌避感すら拡がっている。なぜ政治主導で「生活第一」への政策転換を進めることができなかったのか。政権交代後の二年間の軌跡をたどり、政策形成のあり方、政と官の関係、国会政治の形などから民主党政権の意義と限界を冷静に検証。大震災後の民主政治の課題を考える。


田中信一郎,2020,政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない──私たちが人口減少、経済成熟、気候変動に対応するために,現代書館.(11.24.2020)

今の政治や経済、社会の停滞のメカニズムを分かりやすく解き明かし、アベノミクスや「反緊縮」とは前提を異にする、まったく新しい見地からの経済政策と社会のビジョンを提示する。人口減少時代を迎え、従来の人口増加時代の経済認識やアプローチを転換させることが不可欠であり、インフレ誘導や国債発行などの対症療法ではなく、政策決定過程の透明化や民主化等を通じた根治的な経済・社会の体質改善が迫られていることを丁寧に説く。 もう「野党支持者には対案が無い」なんて言わせない!

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