染井為人,2020,悪い夏,KADOKAWA.(5.6.24)
生活保護の不正受給者、受給者にたかるケースワーカー、同僚ケースワーカーの不正をただしながらヤクザの仕掛けた罠にはまり転落していくケースワーカー、覚醒剤中毒者と化したケースワーカーに暴言を吐かれ子どもと心中するシングルマザー・・・どこにも救いようのないエピソードが延々と続いていく。
読み始めは、生活保護受給者への不信を煽るような人物造形に不快になったが、それを上回る、善人も悪人も次々に不幸のどん底に落とし込まれていく展開の不快さの方が優ってしまった。
次から次に「鬼畜ノワール」の毒が繰り出されていく展開に、気が滅入る。
もちろん、読み手を不快にするフィクションが悪いというのではない。
とはいえ、一縷でも希望をいだかせる結末もあり得たのではないかという思いは残る。
気持ちが落ちているときには避けたが賢明な作品だ。
あまりに救いようがなさ過ぎるから。
26歳の守は生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知った守は、真相を確かめようと女性の家を訪ねる。しかし、その出会いをきっかけに普通の世界から足を踏み外して―。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出を目論む地方ヤクザ。加速する負の連鎖が、守を凄絶な悲劇へ叩き落とす!第37回横溝ミステリ大賞優秀賞受賞作。