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自決の直前に脱稿された本書は、タイトルどおりの「遺言」となってしまった。
思い起こせば、『経済倫理学序説』や『大衆への反逆』は出色のできだったものの、次第に、たかだか明治期に創出された伝統への保守とはこれいかにといった違和感が募り始め、久しぶりに手に取ったのが、遺作となった本書であった。
本書でも展開されている、氏の護憲派批判とグローバリズム批判には、おおいに賛同するものであるが、上記の違和感がやはりつきまとった。
最後に、亡き妻を偲びながら女性を讃える、ナイーブな感傷に触れるにつけ、西部さんは、江藤淳と同じように、女性に依存することなしには生きることができなかったのかもしれない、そう思った。
目次
第1章 今此処における我が国の紊乱状況
総選挙という笑えぬ喜劇
いつになったら消えてくれる、民主主義という狂った言葉 ほか
第2章 瀕死の世相における人間群像
スマホ人―世界を弄んでいるうち世界に弄ばれている人々の群れ
選挙人―「塵も積もれば山となる」朽ちんばかりの病葉の群れ ほか
第3章 社会を衰滅に向かわせるマスの妄動
「踏んづけてくれ、だが命だけは助けてくれ」―それが戦後日本の思想的極意
自由、民主、進歩―すべてが近代の宿痾 ほか
第4章 脱け道のない近代の危機
モダニズム、レフティズム、ラショナリズム、アメリカニズムそしてマスクラシー
イノヴェーション、近代人の生活習慣病か ほか
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