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世代間格差、「日本型格差社会」からの脱却

 加藤久和さん、岩田規久男さんともに、「格差」問題を克服する方途を、社会保障と労働政策の抜本的改革にもとめる。とくに、両者とも、年金制度を、修正賦課方式から積立方式に移行すべきであると論じるが、これにはわたしも同感だ。移行にともなう、納付と給付、および財源確保の方策についてもきちんと議論されていて、評価できる内容となっている。


加藤久和,2011,世代間格差──人口減少社会を問いなおす,筑摩書房.(3.22.2022)

年金破綻、かさむ高齢者医療費、就職できない若者。少子高齢化の進む今、生まれた年によって受益と負担の格差が出てしまう「世代間格差」は、日本の現状と先行きを考えるうえでは避けて通れない問題である。なぜ世代間格差が生まれてしまうのか。格差はいかに解消すべきか。本書は経済学的見地から世代間格差を考察し、実行可能な処方箋を提示する。社会保障・日本型雇用・少子化対策などの問題点を多角的に検証し、新たな経済社会システムの構想を鮮やかに描き出す。

目次
第1章 世代間格差を考える
第2章 疲弊した社会保障制度
第3章 変貌する労働市場・雇用システム
第4章 立ち遅れる人生前半への社会政策
第5章 いかに世代間格差を縮小するか
第6章 新たな経済社会システムを目指して


岩田規久男,2021,「日本型格差社会」からの脱却,光文社.(3.22.2022)

一九九〇年代以降、日本では格差が広がり続けている。例えば、非正規社員の増加は賃金格差を招き、ひいてはその子供世代の格差も助長している。さらに、世代ごとに受給額が下がる年金制度は、最大六〇〇〇万円超の世代間格差のみならず、相続する子供・孫世代の世代内格差の原因に。所得再分配政策は、高齢者への社会保障に偏っており、現役世代の格差縮小にはほとんど寄与していない。そして、こうした格差はすべて、戦後、世界で日本しか経験していない長期デフレが根本にあり、そういった意味で他国とは異なる「日本型格差」といえる特徴的な格差である。では、この「日本型格差」を縮小し、成長を取り戻すにはどうすればよいのか―。本書では、日銀副総裁を務めた著者が具体的な政策とともに提言。より生きやすい日本の未来を模索する。

目次
第1章 デフレ下で進む少子高齢化と格差の拡大
長期デフレによる日本の経済悪化
綻び始める社会保障制度と賃金格差の拡大
規制緩和とグローバリズムは雇用を悪化させたか
第2章 「日本型格差」の特徴
日本の不均衡な所得の再分配
深刻化する日本の貧困問題
年金制度における世代間格差と世代内格差
第3章 成長を取り戻すデフレ脱却と公正な競争政策
90年代以降、日本の生産性はなぜ低下したのか
労働生産性を引き上げるための正攻法
産業・企業保護政策から公正な競争政策へ
第4章 雇用の自由化と女性が働きやすい環境の整備
労働の効率的配分を可能にする制度改革
就業率を高めるための戦略
第5章 これからの所得再分配政策
新しい所得再分配制度で貧困を減らす
年金制度は世代で閉じる積立方式へ

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