金原ひとみ,2021,アンソーシャル ディスタンス,新潮社.(6.19.24)
アルコール依存、整形依存、希死念慮、セックス依存等、底無し沼に足を踏み入れ、壊れていく女たちの物語。
どの物語も底知れぬ悲しみに満ち溢れており、壊れることを半ば望みながら逡巡している女性たちには、大いに共感されることだろう。
ディテールの描き方も秀逸だ。
心を病んだ恋人との同棲に疲れ、自らも高アルコール飲料に溺れていく(『ストロングゼロ』)。職場の後輩との交際にコンプレックスを抱き、プチ整形を繰り返す(『デバッガー』)。夫から逃避して不倫を続けるが、相手の男の精神状態に翻弄される(『コンスキエンティア』)。生きる希望だったライブがパンデミックで中止、恋人と心中の旅に出る(『アンソーシャルディスタンス』)。ウイルスを恐れるあまり交際相手との接触を断つが、孤独を深め暴走する(『テクノブレイク』)。生きる苦しみに彩られた全篇沸点超えの作品集。