カール・ポランニーの社会思想については、なにより代表作の『大転換』を読んでおさえておくべきなのだろうが、本書も含めて、散逸していた論考が後世に編まれたものも読んでおくにこしたことはない。
若いときにかじったポランニーの思想は、おぼろげながら記憶の奥底にある。あたかもモノであるかのように、商品の擬制として成立する労働力市場、国家、企業、個人等の所有物として値踏みされ取り引きされる商品としての土地、そして肥大化する金融市場にあって自ら売買される商品としての貨幣、これらによる市場経済の社会からの脱埋め込みが、搾取労働、人身売買、自然の収奪と環境破壊、恐慌、そして社会の破壊とファシズムの原因なのではないか、こうした問題意識は忘却されず後世に継承されていくべきなのだろう。
「社会的なるもの」の破壊がとめどなく進行する現在、ポランニーの思想は一つの希望としてわたしたちの現前にあり続けている。
目次
第1部 市場経済と社会主義
われわれの理論と実践についての新たな検討
自由について
第2部 市場社会の危機、ファシズム、民主主義
経済と民主主義
ファシズムの精神的前提
ファシズムとマルクス主義用語―マルクス主義を言い換える
共同体と社会―われわれの社会秩序のキリスト教的批判
ファシズムのウィルス
第3部 市場社会を超えて―産業文明と人間の自由
複雑な社会における自由
普遍的資本主義か地域的計画か?
議会制民主主義の意味
経済決定論の信仰
ジャン・ジャック・ルソー、または自由な社会は可能か
自由と技術
アリストテレスの豊かな社会論
社会哲学の最重要論考初邦訳。国家にも市場にも還元されない、人間のための経済社会は可能か?市場経済・民主主義・ファシズム・産業文明の根源的考察。
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