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本と音楽とねこと

イスラーム化する世界

大川玲子,2013,『イスラーム化する世界──グローバリゼーション時代の宗教』平凡社('17.8.14)

 イスラム教といえば、無差別テロも辞さぬ、狂信的なイスラム原理主義武装勢力をどうしても想起してしまうが、本書で紹介されているイスラム教の諸教義(というよりコーラン解釈)は、そのほとんどが、性差別、人種・民族差別等の克服をめざし、他宗教との共存をはからんとする世俗的なものである。エマニュエル・トッドが喝破したように、宗教教義の世俗化は、必然的に、出生率の低下に象徴される女性の地位向上、自民族・自宗教至上主義の放棄と個人主義、リベラリズムの定着に向かう。世界の「イスラーム化」を怖れる必要はない。イスラム教教義の多様性への無理解と、イスラム教徒への偏見と排除が、排他的原理主義の温床となることを、わたしたちは知るべきだろう。

目次
序章 グローバリゼーションのなかのイスラーム
1 イスラームとコーラン(クルアーン)
2 アメリカ人「フェミニスト」の模索―アミナ・ワドゥード
3 アパルトヘイト解決への道―ファリド・イサク
4 イスラーム主義への回帰―ビラール・フィリップス
5 西洋社会との協調―フェトフッラー・ギュレン

パレスチナ・イスラエル紛争から9・11まで、連綿と続く暴力の歴史がもたらしたのは「狂信的なテロリスト集団」など、理解を拒む宗教としてのイメージであった。しかしいま、コーランの新解釈から世界規模で新たな対話を求める動きが活発化しつつある。これまでの宗教観を刷新し、同時代を生きるイスラームを知るための入門書。

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