なぜ、日本では、「租税抵抗」が強く、社会保障の水準が低いままなのか、本書は、明確にときあかしている。
所得税、法人所得税を引き下げ、逆進性の強い消費税への依存を強めていくことは、財政赤字を増大させ、社会保障の水準を引き下げていくことにしかならない。
社会保障の水準が低いままでは、「租税抵抗」はますます強まり、政府への信頼も、一般的な他者への信頼も失われていく。
その行きつく先にあるものは、医療、介護、育児、教育、障がい者福祉全般にわたる、選別的な社会保障と、応益、利用者負担の上昇である。
日本は、アメリカ合衆国、イギリス、韓国等とならんで、こと社会保障の水準という点では、典型的な「失敗国家」といえる。いま、そしてこれから、国家と自治体の財政が、そして租税負担のあり方がどうあるべきなのか、本書は明確な指針を示唆してくれている。
目次
第1章 租税抵抗の財政学に向けて
小さな政府と強い租税抵抗
日本型生活保障の臨界点
租税抵抗に向き合い、財政への信頼を作る
第2章 租税抵抗の歴史的文脈
租税抵抗はなぜ生じるか
日本型負担配分の論理
社会福祉への受益者負担論の侵入
第3章 再分配機能を喪失していく日本の租税構造
減税政策による所得税の財源調達力の喪失
貧困化を促進する負担構造
租税体系における所得税の役割
第4章 財政への信頼をいかに構築するか―国際比較からのアプローチ福祉国家の危機と租税抵抗の高まり
イギリスにおける租税抵抗
スウェーデンにおける租税抵抗
第5章 人々を排除しない普遍的な財政制度へ
人々のニーズを充足する普遍的な財政制度
普遍的な社会保障制度の財源構造
最新の画像もっと見る
最近の「本」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事