エンクロージャー、ギルドおよび村落共同体の破壊、産業革命、産業資本家の跋扈、そして勤勉のエートスがもたらした低賃金長時間労働。なにが「人権」だ、ふざけんな、おれたちゃ奴隷じゃねーよ、というパンクな呪詛の言葉が、オーギュスト・コントやらハーバート・スペンサーやらへの罵詈雑言ともども紡がれていく。
ラファルグは、資本主義社会にける「過剰生産」の宿命と、欧米各国の植民地拡張(による新たな市場の創出)主義、労働者の失業、生活苦とを正確に言い当てている。洒脱な叙情詩を交えた文章がなかなか読ませる。家庭の主婦におさまる女性たちに、いやいやおめえら、売春婦以下の奴隷だからと言ってのける鋭さには、いまだに家父長制と共存する日本人も驚きだろう。だけど、これはまぎれもない真実だ。
いちばんの傑作は、貪欲な資本家とルンペンプロレタリアートによる寓話、「売られた食欲」。とどまることを知らない食欲をもてあます資本家。うまいものを大食し、大酒を飲めば、からだに負担がかかる。そこで、食べたものを消化する役割を、カネと引き換えにルンペンプロレタリアートに担わせる。現代におきかえると、意味深な内容だ。
本書は、隠れた名著の一冊といえるだろう。エティエンヌ・ド・ラ・ボエシの『自発的隷従論』ともども、おすすめしたい。
目次
怠ける権利
災いの教義
労働の恵み
過剰生産のあとに来るもの
新しい調べには新しい歌を
資本教
ロンドン会議
労働者の教理問答
高級娼婦の説教
伝道の書あるいは資本家の書
資本家の祈祷
資本家、ヨブ‐ロスチャイルドの哀歌
売られた食欲
ブルジョワ革命の屁理屈屋が捏ねあげた人間の権利などより何千倍も高貴で神聖な怠ける権利を宣言しなければならぬ―フランスの社会主義者にしてマルクスの娘婿が発した「労働=神聖」思想に対する徹底的な批判の矢が、一二〇年以上の時を超え“今”を深々と突き刺す。「売られた貪欲」「資本教」も収録。
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