もはや、輝かしい未来を予期して現在を犠牲にすることのできない「絶望」の時代に、なぜ若者は「幸福」でいられるのか?この興趣の尽きない、すでに少なくない社会学者が挑んだ問いに土井氏が真正面から答える。
さまざまな統計資料を駆使している点は、基礎データの収集さえ怠りがちな者にはありがたい。ただ、土井氏のほかの著作と比べると、どうもいまいち歯切れが悪い。うーん、そうかな、と思う点もいくつかあった。それ以上に、いろいろな発見に充ちた良い本だとは思う。
目次
第1章 相対的貧困率と生活満足度
拡大する社会的格差
社会的排除の進行 ほか
第2章 高原社会に広がる時代精神
生活満足度の世代格差
増加する高齢者犯罪 ほか
第3章 いにしえからの自分の本質
かけがえのない自分の誕生
地元というフロンティア ほか
第4章 格差と幸福をつなぐ宿命論
生得的属性と期待水準
人間関係の比重の高まり ほか
補論―「宿命」を問いなおす
分断線を越境する人びと
高原期における努力とは ほか
近年、若者たちを取り巻く社会環境は悪化している。社会的格差の拡大とともに貧困も深刻化し、それらに起因するいじめや児童虐待も目立つようになっている。ところがその一方で、各種の意識調査によると若年層における幸福感や生活満足度は、逆に高まっている。この相反現象の秘密とはいったい何か?「宿命」をキーワードに、高齢層など他世代との比較、また時代による社会構造や意識の変化もふまえて解き明かす。
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