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本と音楽とねこと

ヤンキーと地元

打越正行,2019,ヤンキーと地元──解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち,筑摩書房.(2.18.2020)

 上間陽子さんの『裸足で逃げる──沖縄の夜の街の少女たち』ともども、よく売れているらしいし、評価も高い。長年にわたるフィールド・ワークがなければ、書きえなかった労作だと思う。
 ポール・E. ウィリスの『ハマータウンの野郎ども』や佐藤郁哉の『暴走族のエスノグラフィー』とならぶ質的研究を、上間さんや打越さんは成し遂げていると思う。読んでおもしろくないわけないから、こうした質的調査研究がはやるのだろう。
 ただ、最終的には、調査者の筆力がものをいう領域だな、とも思った。『裸足で逃げる』ほどの疾走感は、残念ながら、本書にはない。

目次
第一章 暴走族少年らとの出会い
1 広島から沖縄へ
「メンバーにしてください」
暴走族のパシリになる
響き渡る爆音――沖縄調査一日目 etc.
2 拓哉との出会い
「すぐにでも結婚したい」
はじめての土地で彼女をつくる
ナンパをする理由 etc.
3 警官とやり合う
職務質問を受ける
警官と交渉するスキル
調査の前に信頼関係を築く etc.
第二章 地元の建設会社
1 裕太たちとの出会い
「俺、解体屋しかできない」
鉛筆を重いと言う裕太
地元で有名な「暴れん坊」、太一
2 沖組という建設会社
会社経営の「最強のタッグ」
ピンチを切り抜ける
「給料支払い遅れなし、定額」etc.
3 沖組での仕事
最小限の力で資材を運ぶコツ
現場監督vs.従業員
「時間の話はするな」――一人前への道etc.
4 週末の過ごし方
先輩たちとのギャンブル
ナンパから、キャバクラ通いへ
仕事と週末と夜の世界etc.
5 沖組を辞めていった若者たち
「ズルズルきてしまった」――仲里の生活史
しーじゃたちの仕打ち、「設けて、金、持ってるのが勝ち」――宮城の生活史etc.
6 沖組という場所と、しーじゃとうっとぅ
第三章 性風俗店を経営する
1 セクキャバ「ルアン」と真奈
2 「何してでも、自分で稼げよ」――洋介の生活史
地元での理不尽な暴力
キセツ先での「屈辱」
「上に立つ」という決意
3 風俗業の世界へ
沖縄の性風俗業界
セクキャバ受付からオーナーへ
風俗店の経営者になる
「学歴なんかより、友だち」
4 「足下を見る」ということ
「ヤクザ」への対応
越えてはいけない一線――警察への対応
「地元つながり」を適切に使うetc.
5 風俗経営をぬける
女性スタッフへのサポート
杏里と真奈
6 性風俗店の経営と地元つながり
第四章 地元を見切る
1 地元を見切って内地へ――勝也の生活史
2 鳶になる
3 和香との結婚、そして別れ
4 キャバクラ通い
5 地元のしーじゃとうっとぅ
6 キセツとヤミ仕事
7 鳶を辞め、内地へ
第五章 アジトの仲間、そして家族
1 家出からアジトへ――良夫の生活史
2 「自分、親いないんっすよ」――良哉の生活史
3 夜から昼へ――サキとエミの生活史

生まれ故郷が嫌いだと吐き捨てるように言った、沖縄の若者。その出会いを原点に、沖縄での調査は始まった。生きていくために建設業や性風俗業、ヤミ仕事に就いた若者たち。10年以上にわたって、かれらとつき合ってきた社会学者の、かつてない記録の誕生!

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