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本書で、なにか目新しいことが述べられているわけではない。
もっとも重要な論点は、高齢者自身が望まぬ、苦痛にみちた延命入院加療をするのではなく、住みなれた家、地域社会で、「老衰」で逝くのが幸せな死に方ではないか、ということだ。
こんな主張は、40年以上前からなされていたことを思うにつけ、医療費削減のための反延命措置が講じられてきた一方で、在宅医療、居宅介護の水準が低すぎるのが、最大の問題だと感じた。
「万一、何かあったら心配」「1日でも長生きしてほしい」…。本人に良かれと思って誰もがとる行動が、じつは高齢者を孤独に追いやっているのだ。どんなに安全を求めても、安心を願っても、人間は必ず死ぬ。いま本当に求められているのは中途半端な“安全・安心”ではなく、その“安全・安心”の呪縛から高齢者の生活を解放することなのだ。「うらやましい孤独死」は、そのもっともわかりやすい例だろう。コロナ禍の時代、“理想の死”の見つけ方。
目次
第1章 私が見た「うらやましい孤独死」
「本当にうらやましいよ」
医師の“究極の目標”とは? ほか
第2章 破綻都市・夕張でわかったこと
阪神淡路大震災、建設現場での体験
自分への負い目 ほか
第3章 目を覆いたくなる現場
麻痺していく感情
徘徊か、ただの散歩か ほか
第4章 医療の限界は超えられる
日本人の孤独度は世界トップクラス
医療による対応に限界が見えたとき ほか
第5章 さまざまな解決策
高齢者にとって本当に必要なもの
隣人祭り―渋谷区における成果 ほか
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