桐野夏生,1999,柔らかな頬,講談社.(12.28.24)
「現代の神隠し」と言われた謎の別荘地幼児失踪事件。姦通。誰にも言えない罪が初めにあった。娘の失踪は母親への罰なのか。四年後、ガン宣告を受けた元刑事が再捜査を申し出る。三十四歳、余命半年。死ぬまでに、男の想像力は真実に到達できるか。
ミステリーとしてもロードノベルとしても、最高の作品。
カスミの娘、有香の失踪の真相は最後までわからずじまいだが、カスミの娘探しに伴走する末期がんの元刑事、内海の夢というかたちで、いくつかの蓋然的な真相が語られていく。
謎解きと大団円を期待する読者は、「藪の中」を彷彿とさせる虚構に宙吊りにされ、見事に期待を裏切られる。
大胆な構成と筆力に圧倒される長編小説だ。