数多くの事例を読むにつけ、「就職氷河期」のワーキングプアの深刻さを、あらためて感じ入った。
人間らしく働き生きること、この権利さえはく奪された人々の絶望は重い。政府の棄民政策をなかば黙認してきた国民の責任は大きい。
目次
序章 国からも見放された世代
非正規から抜け出せない
新卒は空前の売り手市場だが……
見過ごされてきた中年層の労働問題
就職氷河期世代の放置が作った歪み
このままでは生活保護が破綻する
筆者の原体験
無気力化した日本の働き盛り
本書の構成
第一章 中年フリーターのリアル
1 とある中年男性の絶望──健司さん(38)の場合
「安定した職」はどこにあるのか?
フリーターのほうが稼げた時代もあった
奪われた「安定」の二文字
たった一度きり経験した「正社員」
2 「景気回復」から遠く離れて
「トリプルワーク」に追われる日々──信也さん(43)の場合
うつ病から非正規スパイラルへ──武志さん(44)の場合
正社員が非正規に転じる理由
「土日に休むとは良い御身分ですね」──幸平さん(33)の場合
ワンマン社長に振り回される日々
厳しすぎる地方の現実
3 結婚できるのは正社員だけ?
定職を持たぬまま働き盛りに──恭介さん(45)の場合
婚活ブームとは無縁の日々──拓也さん(43)の場合
見えない将来の展望
4 「法令順守」が生んだ非正規
非正規シングルマザー──由夏さん(40)の場合
百害あって一利なしの「三年ルール」
二〇〇四年に運命は決まっていた
5 農業のブラックな職場
食えない、休めない、希望もない──祐樹さん(42)の場合
労働基準法なき世界──康弘さん(43)の場合
6 「非正規公務員」の憂鬱
故郷で就職したけれど──健一さん(37)の場合
介護職という激務
延々と続く非正規雇用
第二章 女性を押さえつける社会
1 子どもを産ませない職場
「二人目」はぜいたく品──正志さん(41)の場合
夫にも親にも頼れない閉塞感──智美さん(38)の場合
「二人目不妊」が日本を脅かす
2 閉ざされた「正社員」への道
転職を阻む高すぎる壁──博美さん(39)の場合
学童保育を支える非正規職員──真澄さんの場合
非正規と正社員の間にある賃金格差
見えづらい女性の中年フリーター
小手先の規制強化では不十分
3 「妊娠解雇」の衝撃
増加するマタニティハラスメント──彩花さん(33)の場合
「妊婦は羨ましいよな」
職場復帰しても居場所がない
横行する「妊娠解雇」──陽子さん(39)の場合
育休をとればクビ──清美さん(38)の場合
4 介護・看護職と非正規公務員
「二人目だから流産してもいいじゃない」──理恵さん(35)の場合
妊娠看護師の一〇人に一人が流産
公務員の世界を襲う異変──弘子さん(40)の場合
5 「妊娠解雇」から児童虐待へ──多恵さん(41)の場合
「なんで子ども作るの?」
出産・育児で二度の解雇
たまらず手をあげてしまった日
「子殺し」が他人事と思えない
出産に理解のない企業に価値はない
第三章 良質な雇用はこうして作る
1 雇用のミスマッチをどう減らすか──富山県の場合
働きやすく、住みやすい県
優良中小企業と学生をつなげる仕組み
「就活女子応援カフェ」での一コマ
「中年フリーター」への入口を閉ざす取り組み
2 皆を幸せにするオーダーメイド雇用──小野写真館の場合
働き方は無限にある
出産による離職を避ける仕組み
中年層雇用への意欲
川上に立つビジネスを
小野写真館の採用戦略
就職説明会での一コマ
「この会社を辞めることはない」
3 社長の仕事は「人の目利き」──ノーブルホームの場合
「事業は人を育ててこそ」
ノーブルホームの採用戦略
業界平均を大きく下回る離職率
一〇〇%の育休取得率
4 「ものづくり×女性」の最前線
「年功序列」が企業を強くする──エイベックスの場合
「会社のためという言葉はいらない」
製造現場で活躍する女性たち──協和工業の場合
「自分の仕事を見つけてほしい」
5 社員一人ひとりが輝く職場
「業界ナンバー1の平均給与を目指す」──ハンズマンの場合
社員が輝く仕組み作り
社長の人柄が生んだ企業風土
従業員のやりがいを創る──ワンダーテーブルの場合
終章 中年フリーターは救済できるか
企業経営者から見た中年フリーター問題
政治家から見た中年フリーター問題
正社員化を促す仕組み
誰かを切り捨てた経済は弱い
おわりに
バイト3つを掛け持ちして休みゼロの43歳男性、「妊娠解雇」で虐待に走った41歳女性、手取り17万円で地方医療を支える臨時公務員37歳男性―。非正規雇用で働く35~54歳の「中年フリーター」が、この国では増加の一途を辿っている。なぜ彼らは好景気にも見放されてしまったのか?フリーターを救う企業はあるのか?豊富な当事者取材から「見えざる貧困」の実態を描きだす。
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