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本と音楽とねこと

経済的理性の狂気

デヴィッド・ハーヴェイ(大屋定晴監訳),2019,経済的理性の狂気──グローバル経済の行方を〈資本論〉で読み解く,作品社.(6.6.2020)

 なにより、グローバリゼーションの未来を、マルクスが正確に予見していたことに驚く。
 近代資本主義は、つねに新たなフロンティアをもとめて、かの地に過剰資本を投下し、危機を「空間的に回避」する。たとえば、1990年代以降の、中国におけるセメント、鉄鋼、銅の消費量の増加はすさまじい。
 『資本論』についての予備知識がないと難解ではあるが、マルクスの思索からあらゆる知的資産を引き出し尽くしていくこの執念はすごい。
 新型コロナウィルス禍において、多数の勤労者の窮乏化がすすむ一方で、余剰労働力をそぎ落とし、金融緩和により余剰マネーを吸い上げ続ける巨大資本。この「狂気」を目の当たりにして、あらためて本書の説得力が強く響く。

目次
序章 マルクスだったら、グローバル資本主義の行方をいかに分析するか?
第1章 「運動する価値」としての資本の視覚化
第2章 著作としての『資本論』について
第3章 価値、その表象としての貨幣
第4章 反価値、あるいは減価の理論
第5章 価値なき価格
第6章 技術の問題圏―あるいはマルクス歴史理論再考
第7章 価値の空間と時間
第8章 多様な価値体制の産出
第9章 経済的理性の狂気
終章 資本の狂気に破壊されないために…

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