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筆者は、鬼のように、緻密で執念深い取材をものにしてきた朝日新聞記者なので、内容はとても濃い。
本書が書かれて10年余、雇用は良くなったのか。大胆な日銀の金融緩和政策(これは日本だけではない)、高齢化、退職人口の増加にともなう労働力需給のひっ迫により、こと新卒の就職率については、少なくともコロナ禍の前までは少しはましになったといえるが、低賃金不安定非正規労働者、「官製ワーキングプア」、長時間低賃金労働の「名ばかり正社員」、「名ばかり管理職」の問題は縷々未解決であり、本書の内容は現在もなおいろあせていない。
最低賃金の低さ、労働生産性の低さからして、日本は、先進産業国グループからすでに脱落しており、コロナ禍により、さらなる雇用劣化が懸念される。雇用とサービス経済の発展の好循環を生む経済政策、労働組合による非正規も含めた労働者の権利擁護、全面的包摂がなければ、この国はもう終わりだ。(ずばり言えば、もうすでに終わっており、事態は絶望的だというのが正確だ。)
大幅な人件費削減で不況を乗り切ろうとする日本企業。規制緩和の後押しも受け、いまや労働現場は激変している。過酷な労働と不安定な生活を強いられる非正社員、目先のノルマに追われる正社員…。劣化し続ける雇用は企業の力を奪い、さらなる不況をもたらしている。丹念な取材で今日の雇用の実態を浮き彫りにし、解決の糸口を探る。
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