『定常型社会』など、これまでの著作同様、スケールの大きな議論が展開されている。
ただ、長年にわたって使いまわしされてきた概念、論点が多く、わたしのように、広井さんの著作をすべて読んできた者は、毎度、肩すかしをくらった感が否めない。
環境と福祉の融合、所得への課税から消費と資産への課税へ、人生前半期の社会保障への転換等、毎度のことながら、主要論点には賛同するばかりである。
高齢化の急速な進展の中で、日本の医療費はすでに年間四十数兆円を超え、さらに着実に増加している。一方、私たちは医療や社会保障に必要な負担を忌避し、一千兆円に及ぶ借金を将来世代にツケ回ししつつある―。そもそも医療とは、科学、社会システム、ケア、死生観、コミュニティといった多様なテーマが交差する領域だ。これらの全体を俯瞰したうえで、医療のありようや社会の中での位置づけが、いまこそ公共的に問いなおされねばならない。持続可能な医療そして社会を構想するための思想と道筋を明快かつトータルに示す。
目次
はじめに 「持続可能な医療」への視点
第1章 サイエンスとしての医療―医療技術の意味するもの
第2章 政策としての医療―医療費の配分と公共性
第3章 ケアとしての医療―科学の変容と倫理
第4章 コミュニティとしての医療―高齢化・人口減少と地域・まちづくり
第5章 社会保障としての医療―「人生前半の社会保障」と持続可能な福祉社会
第6章 死生観としての医療―生と死のグラデーション
エピローグ グローバル定常型社会と日本の位置
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