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本と音楽とねこと

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ブレイディみかこ,2019,ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー,新潮社.(5.20.2020)

 読んでいて、ときどき、ウルっときたり、こころから笑ったり、なるほどと感心してしまう、そんな本にめぐりあうの、そうそう多いわけではない。(最近は当たり続けで絶賛しまくってるが。)
 なんなんだろうな、この鋭い感性は。そして、これでもかというくらい見せつけられるユーモア精神と、ペーソスと。もちろん、言葉を選ぶセンスと能力も申し分ない。
 みかこさんは、わたしより少し年下の福岡出身の女性だ。修猷館高校卒。実家が極貧で、お昼に食べるパンも買えない。でも、みかこさんにとって、「楽しいランチタイムに陰気なムードを注入しないよう」、パンも買えないでひもじい思いしてるなんざ、「言ったら死ぬ」くらいの秘密だった。(p.107)うん、よくわかる。わたしも、転校先の中学校で数十人の同級生に押さえつけられ素っ裸にされるいじめを受けてるとか、父親がサイコパスで面前DV、身体的、心理的、性的虐待ありの超問題家族で苦しい思いをしてるなんて、だれにも言えなかった。(言えないで苦しい思いを溜めこんできたから死ぬまで苦しむのだろう。)
 おっとっと、みかこさんの話にもどる。みかこさんは、そんで、大のパンクロック好き。わたしも、パンクロックは中学生のときから、大好きだった。パンクロックのリズムが文体に表れる?そんなわけねーだろうが、なんつーか、ピュアで、かつ斜にかまえた反骨精神が文章にびしばし表れてんだよなあ、だからはんぱないエンパシーを感じるのだろう。そして、同じ福岡出身の伊藤野枝さんの大ファンなんて、まじクール。読みながら、あたまのなかでは、伊藤野枝さんが、Siouxsie SiouxやPauline Murrayみたく、超クールなパンクロックを歌っていた、気がする。
 パンクな母ちゃん、みかこさんと、人の好いアイルランド人のトラック運転手の父ちゃんのもとで育ち、「元底辺公立中学」に通う、超クールな息子さん、両親がハンガリーからの移民で超レイシストのダニエル、家庭がアンダークラスでがりがりにやせ細ったティム、そして、かつて、みかこさんが「底辺託児所」で保育士としてめんどうをみていた、元ギャングスタラップ児、リアーナ(父親がDVで服役中、シングルマザーの母親がネグレクトの疑いでソーシャルワーカーが保護、里親のもとで育ち水泳選手としてプールでみかこさんらと再会する)、この子たちの人物造形がすばらしく、みんなみんなとてもいとおしく感じる。
 多感な子どもたちが、緊縮財政下のイギリス階級社会において、貧困問題や人種・民族差別問題を根底にしたいじめや対立に直面しながら、超クールな友情をはぐくんでいくところなんざ、絶対、きゅんきゅんするぜ。
 というわけで、ブレイディみかこさんの本作品は、文句なしの'Fucking Masterpiece'なのだ。不朽の名著、『子どもたちの階級闘争』とならべて、「階級二部作」とさせていただく。三部作が完成するのを楽しみにしています!

出版社からのコメント
新潮社の社内でも大反響! 部署の垣根を超え、たくさんの社員が今作の虜に! !
ほんの一部ですが、掛け値なしの熱い感想をご紹介! ! !
◎子育てとは親の覚悟と子への信頼につきると強く思います。多様な環境の中、みかこさんが腹をくくって本音で息子さんと接し、息子さんはそれをちゃんと受け止めて、ぐんぐん成長していく姿がすばらしく、胸がいっぱい涙なくては読めません。思春期子育て世代必見の書です。(出版部一般職Y・40代)
◎「答え」が安売りされる時代に、それって本当! ?と立ち止まらせてくれる本。私もこういうお母さんが欲しかったな。本当は誰もが真剣に考えないといけない問題を、率直に、気持ちよく、(おそらく)誰のことも断罪せず、傷つけずに書けるなんて、ブレイディさん凄すぎ! (フォーサイト編集部K・20代)
◎「彼」がしなやかな感性で自分の答えを導き出す姿に、子どもだってディープに「社会」と対峙してるんだ! と衝撃を受け、子育てちょっとナメてたかも…と反省。これから多感な時期を迎える我が子。書名を呪文のように唱えて、一緒に考えられる母ちゃんを目指そうと思います。(芸術新潮A・30代)
◎一度読み始めたら止まらない。とても12歳とは思えない考え方をする大人っぽい面と、音楽に熱中して変な「ボンサイの歌」を作って歌ったりする子供らしい面のある息子さん。そんな息子さんと正面からきちんと向き合うみかこさんとの親子関係がまた素敵。彼の成長を見届けたくなります! (広告部I)
◎イエローでホワイトで、ちょっとブルー。きれいな色。爽やかな話に違いない。そう思って読んだら……がつん。偏見。差別。実際にその渦の中にいると、こんなにも心で受けるものが違うのか。私のエンパシー、まだまだだな。ちょっと泣いてしまいました。(出版企画部一般職・30代)
◎差別、格差、分断といった進行形の問題を「他人事」として考えないようにしていた私は、著者の11歳の息子のフラットで豊かな「想像力」に打ちのめされました。「君は僕の友だちだからだよ」――彼の一言がずっと胸に響いている。(企画編集部T・30代)
◎この親子、とにかく最高! パンクで熱い母ちゃんと、ときにクールに母を諭す11歳の息子。自分を取り巻く雑多で厳しい世界で、何が正しく何が大切かを見極めようとする彼の眼差しに心打たれ、いつの間にか一緒に考えている自分に気づくはず。心から思います、こんな息子がほしかった!(営業部I・40代)
etc.etc・・・

子どもたちの階級闘争

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