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本と音楽とねこと

【名作】黒人のたましい【解題】

W.E.B. デュボイス(木島始・鮫島重俊・黄寅秀訳),1992,黒人のたましい,岩波書店.(3.8.2020)

 日本の社会学史において、不思議と参照されることが少ないのがデュボイスの著作だ。
 それもそのはず、デュボイスの論考は、社会学というより、文学に近い。それでも、社会学、とくに社会運動論において、いまでもその業績をふまえておくべきものあることはまちがいない。デュボイスのネグロイド反差別の思想がなければ、マーティン・ルーサー・キングの「ワシントン大行進」もなかったかもしれない。
 同じネグロイド反差別の思想家といっても、フランツ・ファノンが呪詛のように言葉を紡ぎあげるパトスの人であるとすれば、デュボイスは、ヘンリー・ソロー等のアメリカ自然主義文学者に連ねてもおかしくはない、詩的で抒情的な言葉をつなぐロゴスの人である。
 おそらく、デュボイスのライフヒストリー研究の対象者であったであろう、いく人かの、コーカソイドに差別、排除され、失意の底に沈む人々の人物群像が印象に残る。各省扉と終章で展開される五線譜は、「黒人霊歌」のそれにほかならない。

目次
われわれの魂のたたかい
自由の夜明け
ブッカー・T.ワシントン氏その他の人たち
進歩の意味
アタランタの翼
黒人の教育
黒人地帯
金羊毛の探索
主人と召使の息子たち
父たちの信念
最初に生まれたものの死去
アレグザンダー・クラムメル
ジョーンの帰還
哀しみの歌

黒人の本質とその差別の現実を深く考察し、魂をもつ人間としての黒人を高らかに宣言した名著。リンカーンの奴隷解放宣言から40年後の1903年に刊行され、今日まで綿々と読みつがれてきた黒人論の古典である。W.E.B.デュボイス(1868‐1963)は黒人社会研究の先駆者であり、黒人運動の指導者としても活躍した有数の社会学者。

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