メンバーシップ型雇用社会である日本に、その基本的な特徴を変えることなく、ジョブ型雇用社会の概念、理念、組織論を接ぎ木することにより、大いなる誤解が生じていること、本書はなによりそのことに気づかせてくれる。要するに、企業がジョブ型雇用に切り替えるというのであれば、まず、新卒一括採用という奇妙な採用方式をやめろ、ということだ。
最後に論じられている、日本の企業別労働組合に従業員代表機能が欠落している問題が、とりわけ興味深かった。わたしの経験からも、経営上の問題をその責任を問うかたちで追求する際、経営側は、団交権に代表される純粋な組合機能は認めるけれども、経営上の問題追及については応答責任がないと逃げてしまう。これを、不当労働行為として問題化するのは難しい。組合に必要なのは、従業員代表機能を獲得し、その権限を行使することなのだ。
前著『新しい労働社会』で著者が提起した「ジョブ型」という言葉は広く使われるに至ったが、今や似ても似つかぬジョブ型論がはびこっている。ジョブ型とは何か、改めて説明した上で、ジョブ型とメンバーシップ型の対比を用いて、日本の雇用システムの隠された問題点を浮かび上がらせる。著者の分析枠組みの切れ味が冴える!
目次
序章 間違いだらけのジョブ型論
第1章 ジョブ型とメンバーシップ型の基礎の基礎
第2章 入口と出口
第3章 賃金―ヒトの値段、ジョブの値段
第4章 労働時間―残業代と心身の健康のはざま
第5章 メンバーシップの周縁地帯
第6章 社員組合のパラドックス
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