市場原理と伝統的道徳主義の徹底をはかるハイエク流の新自由主義が、社会的なるものと民主主義とを解体し、宗教右派、あるいは没落、窮乏化する白人男性のルサンチマンを取り込みつつ、さらにその勢力を拡充していった経緯が、詳細に論じられている。
米国における社会民主主義への異常なほどの嫌悪、最高裁判決にみる反同性愛や反中絶(運動)の事実上の容認、さらには陰謀説とポストトゥルースの言論の横行、こうした動向を、ブラウンは、いささか錯綜はしているが、一貫した論理で説明している。本書の魅力はこの点に尽きるだろう。
排外主義や権威主義、ウルトラナショナリズムにフェイクニュース…それらの根源はどこにあるのか。ハイエクなど初期新自由主義者たちの論考を辿りながら世界に吹き荒れる政治言説の布置を問い直す、政治哲学者による批判の書。
目次
第1章 社会は解体されなければならない
民主主義、平等、そして社会的なもの
社会は解体されなければならない
今日のハイエク―自由と社会的なもの
ハンナ・アーレントは助けにならなかった
社会的なものの政治的想像領域の喪失
第2章 政治は退位させられなければならない
新自由主義的な反政治
どこでボタンをかけ間違えたのか?
第3章 個人の保護領域は拡大されなければならない
道徳的伝統主義を新自由主義の要素として理論化する
フリードリヒ・ハイエクの伝統論
現実に存在する新自由主義
国民国家を家族そして私企業として描き直す
第4章 表現するウェディングケーキと祈る妊娠相談センター―新自由主義的法学における宗教の自由と表現の自由
表現するケーキ―“マスターピース・ケーキショップ対コロラド州市民権委員会”裁判
祈る妊娠相談センター―“家族および生命の擁護全米協会(DBA NIFLA)他対ベセラ(カリフォルニア州法務長官)”裁判)
第5章 白人男性に未来はない―ニヒリズム、宿命論、そしてルサンチマン
ニヒリズムと脱昇華
ニヒリズムとルサンチマン
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