二宮さんは、経済学者である以前に、日本共産党のイデオローグでもあるので、しかたないのかもしれないが、マルクスの『資本論』に拘泥しすぎで、かなり食傷してしまう。
それでも、経済学の枠を大きく超えて、時代状況と切り結ばんとする意欲は、ハーバマス等の社会理論を旺盛に取り込んでいるところからも、よく伝わってくる。二宮さんは、ピースミールの知見の背景には、適切なグランドセオリーが必要であることを、あらためて教えてくれている。
エッセンシャルワークが、米英日で、著しくその価値を貶められてきた背景には、この三カ国が、新自由主義のさながら草刈場となってきたことが大きく影響している。女性就業者が多数を占める対人サービス労働は、まさに女性が多数を占めているがゆえに、低賃金労働として捨ておかれてきたわけである。「資本主義と家父長制の新自由主義的妥協」、これこそがエッセンシャルワークが貶価されてきた要因であり、本書に、このような、マルクス主義フェミニズムの知見が加えられていたら、もっと説得力ある議論となっていたことだろう。
コロナ禍で世界的に脚光を浴びたエッセンシャルワーク。人間的諸能力の発達を担う労働を経済学の体系から解き明かし、マルクス『資本論』が残したサービス労働論を、コミュニケーション概念を生かして再構成し展開する。過去のサービス・生産的労働論論争を総括し、人類史的視点から未来社会の「精神代謝労働」を展望する、長年の研究成果の力作!
目次
はじめに 現代のエッセンシャルワークとブルシットジョブ
第1章 現代版ニューディール構想に対応する三大労働部門
第2章 社会サービス労働における「生産」と「消費」
第3章 精神代謝労働としての社会サービス労働の専門性
第4章 生産的労働論論争のなかの社会サービス労働
第5章 福祉国家型公共圏における社会サービス保障
第6章 歴史のなかの社会サービスの将来展望
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