信田さよ子さんの著作はどれもおもしろくとても勉強になるのだが、「共依存」、この言葉だけは本書を読んでも使うのをためらう。たとえば、DV男に殴られ続ける女のなかには、たしかに「私が見捨てればこの人は生きていけない」という幻想に囚われ続けている者もいるだろうが、こうした女は、たんに、逃げ遅れ、あるいは別れ遅れて、苦痛に対して感覚的に麻痺しているだけであって、それでも耐えられない苦痛に後付けの意味を付与しているだけではないだろうか。それを「共依存」と呼ぶのであれば、信田さん自身が危惧しているとおり、加害者の罪を赦し、被害者に責を負わす危険が生じてしまう。
いずれにせよ、「共依存」という言葉は、使うとしても慎重に、強烈な違和感をもちつつあるべきものだろう。
目次
第1章 アダルト・チルドレンと共依存
第2章 共依存とケア
第3章 ケアする男たち
第4章 『風味絶佳』は「風味絶佳」だ
第5章 「冬のソナタ」は純愛ドラマか?
第6章 母の愛は息子を救えるか?
第7章 かけがえのなさという幻想
第8章 暴力と共依存
第9章 偽装された関係
家族問題に関わってきたベテランカウンセラーが、「私が見捨てればあなたは生きていけない」という幻想の背後にある「共依存」の罠を、臨床例や映画などを題材に小気味よく分析。引きこもり、ギャンブル・アルコール依存症に悩む家族を解決へと導く。
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