日本社会における新自由主義政策の歴史を丹念に辿った労作。
新自由主義は、公的機関の民営化、諸規制の緩和がはかられた1980年代にはじまるものではなく、戦時体制期以降、一貫して日本の経済社会の底流にあったことに驚かされる。福祉元年といわれる1960年頃も、新自由主義の時代といえるのか、疑問に思うこともあるが、社会保障の水準も対象もふじゅうぶんであったことを想起すれば、著者の見解が誤っているわけでもないのだろう。
戦後、日本社会に社会民主主義政権が成立したことは一度もない。つねに、日本社会には、新自由主義、ただそれだけがあった。このことを知るだけでも、本書を読む価値はある。
目次
第1章 戦時体制期における新自由主義
第2章 戦後改革期における新自由主義
第3章 高度成長期における新自由主義
第4章 石油ショック後の低成長期における新自由主義
第5章 日本の経済大国化を実現した八〇年代の製造業主導型新自由主義
第6章 日本の低迷と英、米の勃興が見られた九〇年代の金融主導型新自由主義
第7章 政府の介入なしに存続できない二〇〇〇年代の新自由主義
第8章 アベノミクスと新自由主義
従来のケインズ主義にかわって一九九〇年代以降の日本経済を席巻する新自由主義。しかし、その起源は決して新しいものではなかった―戦後日本経済が、戦時体制に端を発する統制・計画経済と、一九三〇年代に起源をもつ新自由主義経済とのせめぎ合いの下に営まれてきたことを、政治家や官僚・経済人の言動を丹念に辿りながら解き明かす。
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