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本と音楽とねこと

日没

桐野夏生,2020,日没,岩波書店.(1.30.2021)

 これは怖い。そうとう怖い。
 言葉に脊髄反射し、「歪んだ正義」と権力という刃物をふりまわす人々のなかにあって、最後、自殺すべく崖の上を追い立てられる主人公は、けっして他人ごとではない。もとの構想はカフカの『審判』に着想を得たものであろうが、最後の展開はその『審判』を彷彿とさせる。
 自粛警察、不織布マスク警察、SNSを炎上させるべくスクショを拡散する人々等を怖れ、少なからぬ人たちが萎縮し恐怖に立ちすくむ。
 絵空事に思えぬからこそ、この小説は怖い。ほんとうに怖い。

あなたの書いたものは、良い小説ですか、悪い小説ですか。小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末は―。

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