佐藤俊樹,2023,社会学の新地平──ウェーバーからルーマンへ,岩波書店.(5.2.24)
いやあ、なかなかおもしろかったね。
「プロテスタンティズムの倫理」、とくにカルヴィニズムは、中世ヨーロッパの修道院での「世俗外禁欲」ではなく、「世俗内禁欲」として定着していった。
そして、フィレンツェで生まれた法人会社の制度は、「人による支配」から「規則による支配」、「公私の分離」等の特色をもつ近代官僚制の基盤となった。
それゆえ、近代資本主義を成立させた具体的な原因として、ウェーバーは一つではなく、少なくとも二つ考えていた。一つはいうまでもなく①プロテスタンティズムの禁欲倫理であり、もう一つは②会社の名の下で共同責任制をとり、会社固有の財産をもつ法人会社の制度である。少なくともその両方がなければ、西欧でも近代資本主義は成立しなかった。
(p.161)
現代の組織のあり方を再考していくうえで参考になる議論も展開されており、退屈な内容ゆえに敬遠されがちな社会学史研究に新たな息吹をもたらす有意義な研究成果であると思う。
マックス・ウェーバーとニクラス・ルーマン――科学技術と資本主義によって規定された産業社会の謎に挑んだふたりの社会学の巨人。難解で知られる彼らが遺した知的遺産を読み解くことで、私たちが生きる「この」「社会」とは何なのかという問いを更新する。社会学の到達点であり、その本質を濃縮した著者渾身の大作。
「近代資本主義の精神」を追究したマックス・ウェーバーと、システム論の泰斗であるニクラス・ルーマン―産業社会の謎に挑んだふたりの社会学の巨人。彼らが遺した知的遺産の可能性と限界そして交差点を徹底的に読み解くことで、いまを生きる私たちの「この」社会への問いへと継承し、更新する。社会学の到達点がここに!
目次
序章 現代社会学の生成と展開
二人の学者と二つの論考
ウェーバー像の転換
第1章 「資本主義の精神」再訪―始まりの物語から
ウェーバー家と産業社会
二つの戦略ともう一つの資本主義
「禁欲倫理」の謎解き
会社と社会
第2章 社会の比較分析―因果の緯糸と経糸
研究の全体像を探る
会社制度の社会経済学
第3章 組織と意味のシステム―二一世紀の社会科学へ
「合理的組織」の社会学
組織システムへの転回
決定の自己産出と禁欲倫理
ウェーバーとルーマンの交差―因果と意味
終章 百年の環