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本と音楽とねこと

鈴木先生追悼文集

 まー、立派な文集になりましたね。関係者のみなさま、ご苦労さまです。
 縁あるいろいろな人たちが寄稿していて、興趣が尽きません。
 わたしも、寄稿しました。以下、再掲します。


社会学界たぐいまれなカリスマ

 鈴木先生の研究室で行われていた大学院ゼミには、つねにピリピリした緊張感がありました。先生は、寡黙ながら、発言される言葉には一切余計なものがなく、一言一言が重く耳に響いたものです。
 寡黙にして、口頭であれ文章であれ表現は鋭利で奥深い。こうしたたぐいまれな資質が、こころ優しいお人柄もあって、多くの人を魅了してきたのでしょう。
 しかし、カリスマは容易に独裁者に仕立て上げられること、そのことを危惧していたわたしには、当時の社会学研究室には、居心地が悪いところもありました。
 先生がリベラルなコミュニタリアンでなければ、一連の社会移動とコミュニティをめぐる研究はなしえなかったと思いますが、いろいろなできごとが、共同体の功罪を再認識する契機となりました。
 とはいえ、先生が残された著作や論文はいま読んでもすばらしく、ちょうど先ほど校了した拙稿、「近隣住区と福祉コミュニティ」でも、先生の著作二点を参考にさせていただきました。かつて、住民意識が地域的相互主義から開放的自己中心主義へと変容した地域社会において、小規模多機能ホームやNPOの活動により、地域に根ざした開放的相互主義の意識が育まれ、住民参加型の地域包括ケアが拡充する事例が散見されますが、先生ならこうしたネオ・コミュニティをどう評価されたでしょうか。しかし、ご意見をうかがうことももう叶いません。
 生前の学恩、数々のご芳情に、こころより感謝いたします。

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