フィクションになにをもとめるかは、当たり前だけれども、ひとそれぞれ違う。
ほとんど救いようのない現実に触れたければ、桐野夏生や吉田修一の作品を読めばよい。本作品は、ハッピーエンドを好む、お子さま向きである。
かろうじて、本作品を読むに値するものにしているのは、人間の俗物性についての細やかな描写、この一点に尽きるように思った。
亮平が書いたブラック企業体験ルポが雑誌に載った直後、四年ぶりに美帆子から電話がかかってきた。美帆子はかつて亮平が家庭教師をしていた拓海の母親だ。拓海は中学受験を前に交通事故で亡くなり、その死はふたりに暗い影を落としている、はずなのだが…。この電話の二ヶ月後、亮平の元を刑事が訪ねてくることになる。リアリズムの名手が放つ傑作犯罪小説。
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