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本と音楽とねこと

検索バカ

藤原智美,2008,検索バカ,朝日新聞出版.(2.13.2022)

 たとえば(あくまでたとえばであって架空の話)、大学1年生が、初年次ゼミの発表で、「児童虐待」、「高齢者介護」、「障がい児対象の特別支援教育」等、要するになんでも良いが、テキトーにお題を決めて、グーグル検索を繰り返し、使えそうなネタを、パワポ(笑)にコピペし、最後のスライドで「ご清聴ありがとうございました」とくる。
 教員としては、キレないようにひたすら我慢、自重し、なぜ、こういうことをやってはいけないのか、切々と説教するしかないわけだが、3年生にもなって、稀ではあるが、同様のことをする学生については、「あれだけ言ったのにいまだになんで検索&コピペするのよ」と泣きたくもなるわけである。
 藤原さんが指摘するとおり、こうした「検索バカ」と、過剰に「空気を読む」態度は、ひとつながりのものであるのだろう。
 大学の卒業生のほとんどは、対人サービスの仕事に就く。問題を多角的、網羅的に捉え、膨大な知識と知恵のストックから、もっとも良質な部分を自分なりに構成し、提示することがもとめられるのに、「検索バカ」だとほんとうに困る。
 ごく少数とはいえ、「検索バカ」を世に送り出してはいけない。つくづくそう思う。

iモード、グーグルの登場から約10年。情報社会の進展で、格段に便利にはなったが、それと引き換えに「自分で考える力」が、急速に失われている。
読書感想文や卒論を、ネット検索からのパッチワークで作るように、「思考」は「検索」に、「言葉」は「情報」へと劣化してしまった。
さらに「空気を読め」という同調圧力が、自立した思考を奪っている。ランキング検索や、クチコミ検索で「マジョリティの空気」を読み、それが世論を形づくっていく。自分の意見よりも他人の意見が気になる、クウキを読む日常……。
『「家をつくる」ということ』や『暴走老人!』などで、時代を読み解いてきた藤原智美がたどりついた、現代社会の問題の本質。われわれは、「考える力」を再生できるのか?

目次
1章 検索バカは、何を失くしたか
2章 クウキに支配される日常
3章 「やさしさ」と「暴走」の時代
4章 不安定な「場」としての家庭、教室
5章 「予定調和」はいつ誕生したか
6章 同調圧力が独自の「思考」と「行動」を奪う
7章 世間から露骨へ
8章 失われゆく「対話」と「議論」
9章 身体性なき言葉は、貧弱になる
10章 沈黙の力
終章 生きることは考えること

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