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本と音楽とねこと

【旧作】シングル化する日本【再読】

伊田広行,2003,シングル化する日本,洋泉社.(8.19.2022)

 現象面として単身世帯が増加していることをふまえるだけでなく、伊田さんは明らかに「シングル化」を肯定的にとらえている。
 お世辞にも文章が巧いとは言えないので、ところどころ思考が中断してしまいイラっとするが、反自由主義にして、シングル単位の社会民主主義国家を理想とする考え方はとてもシンプルである。
 補足的に私見を述べておくと、人間個人はケアしケアされることを必要とするバルネラブル、脆弱な存在であり、それを前提に、個人が、ある程度、自立、自律した存在として、相補うこと、具体的には、たまたま稼得能力を活かせる者が所得の一部を税や社会保険料として納め、たまたま所得を得ることができない者を扶養するしくみが必要だ。子育て支援、教育、介護、医療等も無償で享受されなければならない。高負担高福祉の社会への移行は、扶助する者と扶助される者の立場の相互性からして必然である。
 排他的なジェンダー関係も変容していくべきであり、親密な関係性を制度化した結婚も、多様な結びつき方の一つに過ぎなくなる。親密な関係性は、同性間、異性間のそれを問わず、可変的、一時的なものに変容していくだろう。
 シングルを単位とした社会民主主義の国家においては、女性は、特定の男性との婚姻関係を前提とせずに、生存権を保障されたうえで子どもを産み育てる権利を有することになる。

二〇二〇年には四〇代男性の四人に一人が結婚していない!二〇〇六年以降は人口が減少しはじめる!知らなかったではすまされないほど結婚や家族は変貌を見せてきている。この変貌は、父性・母性・家族の復権を唱えても止められない。それは右肩上がりの成長が望めない時代に対応できなくなった日本社会・日本型家族の歪みを表しているからだ。シングル化する日本で求められている社会システムとは何か?年金や税金、育児や介護、労働や賃金なども視野に入れながらその姿を検討し、結婚や家族・親子関係がどのようになるかをシミュレートする。

目次
第1章 結婚・家族の現在
知らなかったではすまされないほどの変貌
第2章 なぜ結婚・家族はここまで変わってきたのか
家族単位というシステムが行き詰まってきている
非婚化が進む理由 ほか
第3章 これからの結婚をどのように受け止めていくか非婚化・少子化は社会システムのきしみ
対応する社会の選択肢
第4章 非婚化・少子化時代の発想転換
家族単位からシングル単位へ
シングル単位社会の実現可能性 ほか
第5章 シングル単位社会のシミュレーション
夫婦関係はこう変わる
親子関係はこう変わる

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