土屋葉編著,2023,障害があり女性であること──生活史からみる生きづらさ,現代書館.(7.4.24)
障害のある女性48名の生活史から、「障害があり女性である人たち」を生きづらくさせている社会構造や差別について、深く考察した一冊。障害者について論じられるときには、性差別のせいで女性の声がかき消され、女性について論じられるときには障害者差別のせいで障害女性の声はかき消されるという状況がある。しかし、障害のある女性が受ける差別の実態を明らかにする試みはいまだ途上にあり、複雑に絡み合う問題を把握するためのデータは圧倒的に不足している。本書は、この不足を埋めることを試みるものである。
米国フェミニズムの展開の中で、人種とジェンダーをめぐる、差別、抑圧の交差性(intersectionality)の問題が浮上した。
例えば、職場や街頭で白人男性から差別される黒人男性が、家庭では黒人の妻にDVをふるうなどして抑圧するといった事例が挙げられる。
本書は、「障害者であり女性である」という、交差的、あるいは複合的な差別、抑圧を受ける人びとの「生きづらさ」を、生活史の聴き取りから読み取ろうとしたものである。
学校、職場、恋愛、結婚、妊娠、出産、性暴力被害、月経の処理、子宮摘出、不妊手術等々をめぐって、障がい当事者女性の苦しみが縷々述べられていく。
そこから見えてくるのは、障がいには「合理的配慮」がなされても、自らのジェンダー──女性性を否定され否定することを余儀なくされている、交差的、複合的な差別、抑圧を生きる人びとの苦悩である。