レンブラントの絵画の陰影になぞらえて、「オランダモデルの光と影」を論述する。
「光」とは、世界一、ディーセントな労働保障を実現した福祉国家としてのそれであり、「影」とは、移民・難民を排除し、オランダ国民に自国家の尊重を強いるネオ・ナショナリズム、排外主義としてのそれである。
もっとも、福祉国家の成立過程からして、国民の生存権保障と開放的な多文化主義とはあいいれるものではなく、オランダに限らず、欧米諸国がナショナリスティックな性格を強めてきたことは、必然ともいえる。また、低成長の成熟した経済社会にあって、ワークフェア、すなわち勤労福祉レジ-ムへと転換してきたことも、福祉国家の持続可能性にかんがみて、当然の成り行きといえるだろう。
男女ともフルタイムで働くことで維持される、スウェーデン型の高負担高福祉社会の敷居は高い。パートタイム労働者が「短時間正社員」として処遇されるオランダモデルは、日本社会でじゅうぶんに達成可能なものであり、稚拙きわまりない、アメリカモデルの「働き方改革」にとって代わるべきものであろう。
オランダモデルと言われる雇用・福祉改革が進展し、「寛容」な国として知られてきたオランダ。しかし、そこでは移民・外国人の「排除」の動きも急速に進行していた。この対極的に見える現実の背後には、いったいどのような論理が潜んでいるのか。排外主義とポピュリズムの時代を先取りしたオランダの経験から、現代世界の困難を抽出した一冊。
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