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「世界に一つだけの花 」(SMAP)や『世界の中心で、愛をさけぶ』(片山恭一)が大ヒットし、気持ち悪い風潮だなあと思いはじめてすでに久しいが、異様に肥大化した自己愛をもてあました人々は、いまも、ツイッターで、フェイスブックで、インスタグラムで、他者の承認と賞賛をもとめて、他愛もないことをつぶやき続ける。そうした風潮を、「万人表現者の時代」として肯定的に捉える向きもあるが、職場等の身近な場所で異様な自己愛の持ち主とトラブると、やはりこれはただごとではないとも思う。
本書の白眉は、自己愛を、パーソナリティの一要素として留めることなく、壮大な比較文明論を展開するうえでの重要概念として駆使している点にある。身近な人々の異常な自己愛の有り様を再考したく本書を手にした人は、肩透かしを食った気がするかもしれないが、けっこう面白い内容の本なので、オススメしたい。
目次
第1章 自己愛型社会と現代人気質
第2章 自己愛の帝国―古代ローマと自己愛型社会
第3章 変容する公共精神―滅びゆく帝国
第4章 小さな経済大国オランダの教訓
第5章 現代オランダ社会に見える日本の未来
第6章 パックス・アメリカーナの翳り
第7章 崩壊する摩天楼
第8章 来るべき社会の未来図
“自己愛型社会”とは、欲望と快楽が唯一最大のモチベーションであり、自分が常に輝いていることを求める社会である。民衆がパンとサーカスを求めた古代ローマ帝国、極端な個人主義社会だが、対話と譲歩で道を拓いたオランダ、満たされぬ自己愛を強い国家と戦争で解消するアメリカ。それらを検討する中から、日本の進むべき方向が浮かび上がる。“自己愛のダイナミクス”から社会と歴史を捉え直し、混迷する社会を生き抜くためのヒントを提示する。
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