わたしたちの行動は、「エコン」(合理的に利益極大化をはかる経済人)モデルではなく、「ヒューマン」(しばしば判断ミスをともない非合理的にふるまう等身大の人間)モデルによって、よりよく説明できる。
例示される問いの一つ一つが興味深い。
わたしたちは、無条件に利益を供与される場合、それをそのまま享受するが、不利益を課せられる場合、リスクをとって小さな確率で利益をあげることを選択する。
人間は、感情と直感でものごとを判断するが、それだけではなく、合理的で冷静な熟慮により、直感と感情による判断ミスを避けようとする。本書は、どうすれば前者による致命的な判断ミスを防ぐことができるのか、いかにわたしたちの思考が非合理に陥りやすいかを例示しながら、明快に処方箋を提示してくれている。
みかけの統計に騙されないようにするための、優れた確率論を展開した行動経済学のテキストとして読むこともできるだろう。
上巻
整理整頓好きの青年が図書館司書である確率は高い?30ドルを確実にもらうか、80%の確率で45ドルの方がよいか?はたしてあたなは合理的に正しい判断を行なっているか、本書の設問はそれを意識するきっかけとなる。人が判断エラーに陥るパターンや理由を、行動経済学・認知心理学的実験で徹底解明。心理学者にしてノーベル経済学賞受賞の著者が、幸福の感じ方から投資家・起業家の心理までわかりやすく伝える。
目次
第1部 二つのシステム
登場するキャラクター
注意と努力
怠け者のコントローラー ほか
第2部 ヒューリスティクスとバイアス
少数の法則
アンカー
利用可能性ヒューリスティック ほか
第3部 自信過剰
わかったつもり
妥当性の錯覚
直感対アルゴリズム
下巻
私たちは日々どのように意思決定を行なっているのだろうか?カーネマンによると、直感的で感情に根ざす「速い思考」と合理的で努力を要する「遅い思考」の相互作用だという。二つの思考の特徴を分析し、人がいかに錯覚に陥りやすく不合理な決定を行なうかを浮彫りにする。プライベートやビジネス、政治における、よりよい決断への道筋を示し、あなたの人間観、世界観を一変させる21世紀の新たな古典。
目次
第3部 自信過剰(承前)
エキスパートの直感は信用できるか
外部情報に基づくアプローチ
資本主義の原動力
第4部 選択
ベルヌーイの誤り
プロスペクト理論
保有効果
悪い出来事
四分割パターン
めったにない出来事
リスクポリシー
メンタル・アカウンティング
選好の逆転
フレームと客観的事実
第5部 二つの自己
二つの自己
人生は物語
「経験する自己」の幸福感
人生について考える
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