本と音楽とねこと

【旧作】子ども時代を失った子どもたち【再読】

マリー・ウィン(平賀悦子訳),1984,子ども時代を失った子どもたち,サイマル出版会.(8.18.2022)

 なぜ、子どものうつ病が増加しているのか、その答えが本書のなかにある。
 子どもが大人によって保護されるべき存在ではなく、児童期になると「小さな大人」(フィリップ・アリエス)として家庭や農場、工場等で酷使されていた中世の時代に、現代は回帰しつつある。
 現代の子どもは労働を強制されることはないが、幼いうちから、親から放置され、テレビ漬け(いまはスマホやタブレット漬けか)となり、こころの準備ができないまま、性愛、暴力、薬物等の刺激にさらされ、「大人」にならされる。両親が離婚し、絶望と不安、喪失感にうちのめされながら、傷ついた親を慰めることで、親と子の立ち位置が逆転する。そこにある子どもの役割は「ヤングケアラー」のそれにほかならない。
 子どもの主体性を重んじ自由にふるまわせることが、からだは大人になっても、自制心や他者への共感に乏しい子どものままである者を増やし、そうした「大人子ども」は不適応に苦しみ、脆弱な自尊感情が抑うつ状態につながり、ときに自己と他者への破壊的感情につながる。
 現代の子どものこころの危機を深く理解させてくれる好著であり、いまこそ再版が望まれる作品である。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「本」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事