なぜ、子どものうつ病が増加しているのか、その答えが本書のなかにある。
子どもが大人によって保護されるべき存在ではなく、児童期になると「小さな大人」(フィリップ・アリエス)として家庭や農場、工場等で酷使されていた中世の時代に、現代は回帰しつつある。
現代の子どもは労働を強制されることはないが、幼いうちから、親から放置され、テレビ漬け(いまはスマホやタブレット漬けか)となり、こころの準備ができないまま、性愛、暴力、薬物等の刺激にさらされ、「大人」にならされる。両親が離婚し、絶望と不安、喪失感にうちのめされながら、傷ついた親を慰めることで、親と子の立ち位置が逆転する。そこにある子どもの役割は「ヤングケアラー」のそれにほかならない。
子どもの主体性を重んじ自由にふるまわせることが、からだは大人になっても、自制心や他者への共感に乏しい子どものままである者を増やし、そうした「大人子ども」は不適応に苦しみ、脆弱な自尊感情が抑うつ状態につながり、ときに自己と他者への破壊的感情につながる。
現代の子どものこころの危機を深く理解させてくれる好著であり、いまこそ再版が望まれる作品である。
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