キャバ嬢への未払い賃金をお店の経営者へ支払わせるべく、東京・上野の夜の街へ繰り出す「キャバクラユニオン」の面々と元キャバ嬢。黒服の客引きたちが、彼女、彼らを大声で罵倒する。(賃金なしで)「働け!」
のっけからみかこさん、飛ばします。同じ雇われ者として、連帯するのではなく、経営者目線になりきって、未払い賃金の支払いを要求する者たちを罵倒する。とっくのむかしに、「下層」に転落しているのに、「自分は働き者の中流だ」という幻想にすがりつき、自らが人間らしい生活をおくる権利も、人格の尊厳もはく奪されたみじめな「奴隷」でしかないことを認めるだけのプライドさえもてずに、そして、自分より弱い立場の者たちが、人として当然の権利を主張すると、醜い劣等感情、嫉妬心を露わにして、攻撃する。まずは、この醜悪な問題の構図を、かつてフランクフルト学派が明らかにした人間心理を、直視することからはじめよう。
世田谷の「自主保育の会」にて、川辺のホームレスが、子どもたちの善き遊び相手、教師、ケアラーとして、現に存在する逸話に、わたしは、深い絶望のなかの一縷の望みをつなぐ。深く絶望するしかない現実を突きつけ、なおもそれを笑い飛ばすユーモアを忘れす、奇跡としかいえない事実に希望を見い出す、これこそがみかこさんの真骨頂である。
もちろん、超おすすめの一冊だ。
目次
第1章 列島の労働者たちよ、目覚めよ
キャバクラとネオリベ、そしてソウギ
何があっても、どんな目にあわされても「働け!」 ほか
第2章 経済にデモクラシーを
経済はダサくて汚いのか
貧乏人に守りたい平和なんてない ほか
第3章 保育園から反緊縮運動をはじめよう
保育士配置基準がヤバすぎる衝撃
紛れもない緊縮の光景 ほか
第4章 大空に浮かぶクラウド、地にしなるグラスルーツ
日本のデモを見に行く
交差点に降り立った伊藤野枝 ほか
第5章 貧困の時代とバケツの蓋
川崎の午後の風景
鵺の鳴く夜のアウトリーチ ほか
エピローグ カトウさんの話
やけくそのパワーで労働者階級が反乱を起こす英国から、わが祖国へ。20年ぶりに著者は日本に長期滞在する。保育園で見た緊縮の光景、労働者が労働者に罵声を浴びせる争議の現場、貧困が抜け落ちた人権課題、閉塞に穴が開く奇跡のような場所…。これが、今の日本だ。草の根の活動家たちを訪ね歩き、言葉を交わす。中流意識に覆われた「おとぎの国」を地べたから見つめたルポルタージュ。
フリーター全般労働組合・キャバクラユニオン
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