本と音楽とねこと

取り憑かれるということ

 上野千鶴子さんといえば、学部学生時代、夢中になって読みふけった幾多の論文を書いた社会学者だ。わたしが大学院へ進学することを決めたのも、上野さんの著述で社会学的思考の面白さを堪能したことが大きかった。学生時代、強く惹かれた学者には、上野さん以外にも、村上陽一郎、村上泰亮、西部邁、栗本慎一郎、岸田秀、P.L.バーガー、E.フロム、C.W.ミルズ等々数多く存在するが、これらの学者の著作をそれこそ寝食を忘れて読みふけったものである。これは、宮台真司さんも指摘していたことだけれども、自らの思索する力を深めていくためには、優れた書き手に惚れ込み、その人に憑依されたごとくに著述を読みふけることがいちばんだ。
 どんなことでも、忘我の境地に至れるほどに惚れ込める対象を常に探し続ける姿勢が大切だ。惚れ込んだ対象からおいしいとこをむさぼり尽くしたら、さっさと次の獲物を探す、そうした節操のなさも自分のなかの引き出しを増やしていくためには必要だとも思う。

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