Entrance for Studies in Finance

2010年のロシア経済 

2010年 ロシアの不透明で暗い部分は健在
 2010年12月27日 モスクワの地区裁判所がロシア石油大手ユーコスのホドルコフスキー氏(2003年に逮捕)と大株主のレベジェフ氏に再び有罪判決 欧米からプーチン政権との対立による別件逮捕、司法が政治により利用されているとの強い批判がある
(不透明な事件がロシアに絡んでは多い。2006年10月の女性記者アンナ・ポリトクスカヤ暗殺事件。翌月ロンドンで起きたアレクサンドラ・リトビネンコ毒殺事件。なおユーコス事件と似ていたが異なる結果になったのがルスネフチのグツエリエフ氏。2007年にホドルコフスキーの場合同様に脱税容疑で起訴。逮捕が迫ったとの判断でトルコ経由で海外に逃亡した。ところが3年後の2010年、容疑自体が取り消されてグツエリエフは帰国を果たしている。)このようなロシア社会の不透明さは、依然残っている。

2010年 ロシア経済の特殊性 強さと弱さ
ロシアは資源国である。とくに石油・天然ガス。それらのヨーロッパへの輸出によって経済が成り立っている。しかしそのことが、ロシア経済の弱さにもなる。
 ロシアの輸出の65.6%が石油天然ガスなどの燃料・潤滑油品目。その次の項目が工業用原材料20.2%。地域的には欧州向けへの依存度が高い。欧州への過度の依存、資源産業の依存はロシア経済のリスク。たとえば欧州の成長率低下や、資源価格の低下。これらがロシア経済の低迷に直結する。そこで資源産業にかわる競争力のある産業の育成、輸出先の分散が課題になる。
 →2008年の金融危機の後の石油安を受けて ガスプロム ロスネフチなどが財務状況悪化 政府が緊急融資へ(融資要請2008年9月末)
 また天然ガス価格が回復しない原因として2008年以降、シェールガスの生産増加が指摘されている。頁岩(けつがん=シェール)と呼ばれる硬い岩石層からの効率的採掘法が定着したことが指摘されている(これはシェールガス革命と呼ばれている)。2010年、天然ガスの相場は低迷を続けた。
 →Jim Efstathiou and Kim Chipman, "The Great Shale Rush"in Bloomberg Businessweek, Mar.7, 2011, pp.25-28.

2010年後半 
2010年12月23日 プーチン首相 3月に導入した新車買い替え促進政策(政府が5万ルーブル、約15万円を補助する)を2011年も継続する方針表明
2010年12月10日 スペイン大手銀 サンタンデールによる現地法人売却表面化
2010年12月2日 米ペプシコがロシア食品最大手ウインビルダン(WBD)買収を発表 買収総額58億ドル(約4900億円)
2010年11月 三菱重工業と双日 中国化学大手の中国化工集団(CNCC)と共同でロシア政府系企業アンモニーから同国内(ロシア南部タタールスタン共和国)に化学プラント建設を受注。受注総額10億6000万ドル(約850億円)
2010年10月 ロシア 2015年までの民営化計画を最終決定
2010年10月以降 資本流出加速 ルーブル安 割高な人件費 公務員の汚職の横行 景気の先行きに不透明感
2010年9月27日 ロシア中国首脳会談(北京) 貿易投資 エネルギー分野の協力拡大で合意
2010年8月末 印刷インキ世界最大手DIC(2009年度売上高4105億円 海外比率約8割 新興国は全体の2割) 新工場建設(モスクワ市近郊)に着手 2012年初め稼働目指す(インドでも1月に工場新設) モスクワ市郊外の既存工場は2010年初めよりフル稼働
2010年8月27日 ウクライナ 収穫高は減少が見込まれるもの小麦輸出制限を9月15日まで導入しない方針示す
2010年8月15日 猛暑による干ばつ被害拡大を受けてロシア政府 穀物輸出の一時禁止措置を開始
  日本の小麦輸入は品質が安定している米国・カナダがほとんど 両者の天候の違いから補完性 旧ソ連地域の輸出量は2000年代に増加し2008-2009年度に米国の輸出量を上回るようになった
  ガスの生産では世界最大。石油の生産でも1位のサウジアラビアを輸出量で追っている。もともと1991年まで原油輸出で世界1位だったが、ソ連崩壊後 生産量 輸出量とも落ち込んだ
  天然ガス独占企業 ガスプロム
  石油輸送 トランスネチフ
  原子力 アトムプロム
  鉄鋼大手 エブラスグループ
  アルミ大手 UCルサール
  武器輸出など ロステクノロジー
  航空機製造 UAC    
2010年8月 猛暑と干ばつにより農家に被害 食品(牛乳 パンなど)など小売価格上昇
2010年7月 堅調な資源価格を受けて個人消費回復 猛暑と煙害で客足にかげり
2010年7月1日 ロシアとカザフスタンによる関税同盟(両国間で税関手続き 関税撤廃)が発足 1991年のソ連崩壊後初の地域経済統合の動き

2010年前半
2010年6月 ロシア 国営企業の大規模な民営化に着手するとのこと 2011年末までに株式売却で1000億ルーブルを調達 財政収支改善に使う
2010年6月 *日産自動車 サンクトペテルブルク工場 2交代制開始 年産台数を2倍の3万5000台に
 (日産自動車ノサンクトペテルブルク工場は2009年6月2日稼働 トヨタ いすずに続く現地生産 当初投資額は2億ドル 年間生産能力はトヨタ工場と同規模の最大5万台 金融危機の影響を強く受けていた時点での稼働で 開設式にはプーチン首相も参加して注目された。ロシアの部品企業40社から部品を調達 従業員規模750人 雇用創出効果5000人超と評価された。日産の対応は、新車販売が大幅に落ち込んんだことで、同じサンプトペテルブルクで4輪車工場の2009年後半稼働を検討していたスズキが、2008年夏に稼動時期を延期、さらに2009年6月に計画の凍結先送りを発表したのと対比されるものであった) 
 なお国産車最大手はアフトワズ 2位がGAZ 外国車より低価格
2010年6月 日立建機 ロシアに油圧ショベルの新工場建設へ 2011年稼働目指す
2010年6月 コマツ ヤロスラブリに工場開設
2010年6月 丸紅 独立系民間石油会社イルクーツク石油と包括提携
2010年6月 ロシアとベラルーシ 首脳会談 ガス供給で対立 
2010年4月21日 ロシアとウクライナ ウクライナ向け天然価格引き下げで合意 クリミア半島駐留のロシア黒海艦隊への基地貸与を期限の2017年から最大30年間延長でも合意
2010年4月 丸紅がロシア産小麦の輸入を本格化させる3年後には年40万トン(日本国内の小麦市場は年630万トン うち9割が輸入 輸入は北米 豪州が中心)
2010年4月 ユニクロがロシアに進出(モスクワで3年以内に10店舗出店目標)
2010年4月 三菱自動車 フランスのプジョーシトロエンGと共同で西部カルーガ州に組立工場を稼働
2010年3月 日立建機では全額出資の販売子会社「日立建機ユーラシア販売」をロシアに設立 7月から営業を開始する ロシア全土に110店舗ある既存の代理店に卸売する 輸出価格はロシアルーブル建てにして為替リスクは日立建機が管理する
2010年2月1日 ロシア国家統計局 2009年の国内総生産速報値 前年比7.9%減 マイナスは1998年以来
2010年1月17日 ウクライナで大統領選挙 親ロシア派のヤヌコビッチ氏が勝利 背景に深刻な経済危機(IMF予測で2009年成長率はマイナス14%)(2009年 ロシアはウクライナとガス紛争 ウクライナを経由するガス供給受けるヨーロッパ諸国にも不安広がる)


ロシアの暗いイメージとサハリン開発
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