はじめにで著者は述べている。「なるべく感覚的に理解できることを重視した」と。実はこれはすごく大事なこと。読んで、感覚的に理解できないことが多いというのは大問題だ。また「古典的すぎる」内容も入っていると断っている。これも大事だ。伝統的な議論が何かわからなければ、何が新しいかもわからないだろう。最近のことだけ覚えればよいというものではない。
まず最初の金融仲介機関の機能の説明において、信用リスクの負担のほか、期間のミスマッチ、そして金利のミスマッチを金融機関は負っていると説明する。p.4 たしかにこの後者の2つへの注目は大事。
つぎに金融規制の役割として、個別の金融機関の問題-預金者保護のほかに、金融システム全体の維持の問題があることに言及している。後者は波及するドミノ効果のことかもしれない。p.8-9
最初にナローバンクが、金融規制に置き替えられるかが議論され、(十分な資金が集まらない あるいは貸付機能を果たさない)金融仲介機能を果たすものとはいえないので、ナローバンクは規制の目的に合致しないとしている。p.12-13
金融規制の代名詞となってるCAMELは1979年に銀行評価制度として導入された。p.27-28
資本の充実度 capital adequacy
資産の質 asset management
経営管理 management
経営管理 management
収益性 earnings
流動性 liquidity
出るがこれに加えて1996年にSが追加され、各項目の評価にあたりリスク管理能力を重視する改定が行われた。
市場感応度 sensitivity to market risk
市場感応度 sensitivity to market risk
なおこうした評価において問題にされるリスクはつぎのとおり:それぞれ損失として具体的明確に書かれている。p.31
信用リスク 信用供与先に財務状況悪化により資産の価値が減少消失、損失をこうむるリスク
市場リスク 市場のリスクファクターの変動により、資産・負債価値が変動し損失をこうむるリスク、資産・負債からうみだされる収益が変動し損失をこうむるリスク
流動性リスク ミスマッチや思わぬ資金の流出により必要な資金確保が困難になる、あるいは通常より著しく高い金利で調達を余儀なくされ、取引ができないあるいは通常より著しく不利な価格での取引を読偽なくされることで損失をこうむるリスク
オペレーショナルリスク
役職員による正確な事務を怠ったこと、あるいは事故・不正を起こすことにより損失をこうむるリスク。コンピュターシステムのダウンまたは誤作動、システムの不備、不正な使用などに伴い損失をこうむるリスク。その他、法務リスク、風評リスクなど。
自己査定における債権分類。相手先が破綻したとしても(破綻先債権)、優良担保で100%カバーされていれば、債権の区分としては回収の可能性が高い「正常債権」である。担保による回収見込み額(7割 3割 無担保)と、相手先の財務内容により、以下「回収に注意を要する債権」「回収に重大な懸念のある債権」「回収不能債権」に区分される。p.44
自己査定における債権分類。相手先が破綻したとしても(破綻先債権)、優良担保で100%カバーされていれば、債権の区分としては回収の可能性が高い「正常債権」である。担保による回収見込み額(7割 3割 無担保)と、相手先の財務内容により、以下「回収に注意を要する債権」「回収に重大な懸念のある債権」「回収不能債権」に区分される。p.44
不良債権。破綻懸念先以下の債務者に対する債権にこれらに含まれていない3ケ月以上延滞債権と貸出条件緩和債権をくわえたもの。p.46
大口信用規制(自己資本の25%まで)。同一人(同一グループ)に対して。p.48 この計算は、資金の流れが相互にあるので、かなり面倒になっているが、この計算問題はここでは外して進む。
earningsのところで維持可能性、継続的に収益をあげられるビジネスモデルになっているかが問われている。p.57これは企業分析でも大事な視点。
liquidity とsolvency.手元資金が不足し支払い不能の状態に陥るのがliquidity。債務者である預金者に弁済できるだけの資産価値を失うのがsolvencyで、それは資本の問題の裏返しと説明している。pp.71-72
liquidity とsolvency.手元資金が不足し支払い不能の状態に陥るのがliquidity。債務者である預金者に弁済できるだけの資産価値を失うのがsolvencyで、それは資本の問題の裏返しと説明している。pp.71-72
バーゼルⅠ(1996-日本では1998/03より実施)、バーゼルⅡ(2004-日本では2007/03実施)、バーゼルⅢ(2010 2013より段階実施予定)の内容が説明されている。pp.79-85 最低所要自己資本比率としての8%には変わりはないものの、
Tier1比率等が引き上げられ、これに資本保全バッファーの上乗せ規制がある。
pp.88-95(なおバーゼルⅡからバーゼルⅢへの議論において、自己資本の損失吸収バッファーとしての役割が議論され、普通株などTier1が重視されるようになった。内部留保の損失吸収機能、普通株式の増資・減資による損失吸収機能。金融機関の経営破綻回避、存続を考えた場合、この自己資本の役割が大きいということであろう。自己資本比率を維持するということは事業継続と裏腹。自己資本比率規制は、金融機関の存続を前提にした規制だといえよう。)
#CAMEL #債権自己査定 #正常債権 #不良債権 #大口信用規制 #solvency #バーゼル規制 #バッファー機能