Entrance for Studies in Finance

金融政策の正常化圧力 長期金利変動幅拡大 ⇔ 長期にわたる大規模な金融緩和の副作用

米国 失業率大きく低下するも 賃金伸び悩み(IT化が背景とされる)
FRB 2018年年3回の利上げ見込み 中国マネーの動向に神経とがらす 世界的カネ余り 主要国で唯一長期金利2%台維持 そこで世界のマネーが米国にむかっている 米国金利引き上げで景気を冷やす懸念+これ以上の米国へのマネー流入避けたい+潜在的成長率の低下 ⇒ 長期金利の上昇幅限られる

ECB 2017年6月 量的緩和の縮小を示唆 資産買入れの縮小を決定→ユーロ高招く

これまで日米欧は、金融緩和の縮小(=金融政策の正常化)を、景気悪化懸念からゆっくりと進めてきた。欧州や日本の場合は、ユーロ高、円高を避ける見地から、緩和縮小での米国の動き(金利の上昇)を見ながらになる。

日本 2017年7~9月 法人企業統計 設備投資前年同期比4.2%増 4四半期連続増

日本 2017年7~9月 GDP 実質で前期比0.6%増 年率換算2.5%増 プラス成長は7四半期連続

日本 2017年11月 有効求人倍率倍率1.56倍 1974年1月以来43年11ケ月ぶりの高水準 失業率2.7% 24年ぶりの低さ 人手不足 女性・高齢者 外国人の就労増加

   2017年11月 生鮮食品を除く消費者物価(前年同月比+0.9%  10月の+0.8%から上昇)

   2017年11月 鉱工業生産前月比0.6%増(10月は0.5%増) 機械受注前月比5.7%増 持ち直し

日銀 2013年4月 2年で2%の目標で異次元緩和 年60-70兆円 (1ドル92円台 消費者物価上昇率はマイナス圏)

日銀 2014年10月 追加緩和 年80兆円

2016年2月 マイナス金利政策(銀行が日銀にもつ当座預金の一部に対し)

日銀 2016年9月(総括的検証) 金融政策の目標を国債購入の量から金利に変更(長短金利操作 長期金利0%程度 短期金利-0.1%程度)+国債買い入れを事実上縮小(=ステルス・テーパリング あるいは形骸化年80兆円のはずが年50兆円・・・2018年1月)テーパリング:金融資産買入れ額の段階的縮小

2017年11月 バーゼル3で 保有国債をリスク資産とすることを求めるドイツの議論を退ける

2017年12月21日 金融政策決定会合 長短金利操作の現状維持 資産買入れ方針の現状維持決める 株価の過熱感(バブル)を否定

日銀 2018年1月 国債買い入れ額縮小(2018年1月9日) 長期金利2ケ月半ぶりの水準に上昇(金利差拡大はドル高・円安。そして日米金利差が縮小すると円高になる) → 円高/株安(1月10日に一時111円台後半 1ケ月半ぶりの円高 他方で日本企業の海外企業の合併・買収 あるいは外国証券投資に伴う円売り圧力がある) → 日銀により好循環の崩壊へ(崩壊をさけるために日銀は米金利の上昇局面でドル買い圧力の高い局面でなければ利上げに移れないと観測されている) 市場ではゼロ%程度とする長期金利の誘導目標の引き上げを予想する声増えている(2018年1月)

1月23日金融政策決定会合 長短金利操作の現状維持 資産買入れ方針現状維持 2%の物価安定目標維持 を決める

1月31日満期まで3年超5年以下で26日より300億円増やす

1月31日米国で長期金利が一時2.75%と3年10ケ月ぶりの水準

2月1日 新発10年債利回り 誘導目標上限の0.100%に再び接近

2月2日米国株式市場ではダウ工業株が665ドル下げ 9年ぶりの下げ幅

2月2日 指定した利回りで無制限に買い入れる指値オペ(7ケ月ぶり)実施+定例オペも実施 5年超10年以下買入れ額を4100億円から4500億円に引き上げ 指し値オペの実施→日銀による金利上昇を抑える明確な意思を市場は確認

米国では経済の復調から FRBは利上げ路線。これはドル高・円安要因。しかし円安は日本企業の輸出を拡大するのでドル需給の面では、円高・ドル安。つまり綱引き状態。あるいは円相場は停滞状態。
2月5日 日米で株価暴落 日経平均は一時600円下げ 投資家心理の悪化で債券需要高まる(株安によるリスク回避で債券需要→長期金利上昇抑える効果) → 米国 金利上昇から株式暴落 2018年2月
2月10日 4月8日に任期満了の黒田東彦総裁続投案報道(3月19日任期満了の副総裁岩田規久男氏は交代)
2月15日5年超10年以下の買入れ額4500億円維持
2月16日 政府 衆参議院運営委員会理事会で黒田総裁再任案提示 副総裁には日銀の雨宮正佳理事 若田部昌澄早大教授(マネタリベースの拡大+2019年10月の消費税増税延期を主張) 金融緩和が維持されるとみて円相場は一時円安に振れるも 米国の財政赤字拡大懸念 物価上昇率の高まり受けて ドル安(円高)に 一時1ドル105円台  黒田氏交代はアベノミクス(2012/12→2018/01  デフレは物価はマイナス0.2%→0.9%上昇まで回復 失業率は改善4.3%→2.3%  公債残高179%→189% 日経平均1万395円→2万1720円 日銀の国債保有割合12%→41%)失敗の印象を与える恐れがありできなかったとされる 今後2019年10月の消費税率引き上げ(→大不況に突入? 金融緩和の持続+積極的な財政出動は不可避? マイナス金利による金融機関経営悪化の弊害は深刻であるため金利でのこれ以上の深堀はできない)を乗り切れるか 東京五輪後の新たなテーマがないことによる景気後退 が懸念材料。中長期的には技術革新に伴う賃金格差の拡大、人口高齢化による労働力人口の減少

米国ではその後 2018年3月と6月に利上げが行われた。2018年7月にはECBのドラギ総裁が金融緩和縮小を進める方針を示している。日本も含め金融政策を正常化させたい思いは米欧日の中央銀行に共通する。しかし日本は2016年9月に見直して以来(長期金利を0%程度に誘導 長短金利操作導入)、金融政策を枠組みを変えていなかった。日本は失業率は低いが、物価上昇率も低い(2018年4月―5月生鮮食品除く消費者物価上昇率は0.7%程度)。低賃金の労働者が増えた。新興国の安価な労働製品が物価を押し下げている。ネット通販の影響。こうした中で金融緩和が長引くことの副作用が繰り返し指摘されるようになっていた。2018年7月末 金融政策は役約2年ぶりに身直された。
2013年1月 日銀は物価上昇率2%(=インフレターゲット)を政府は持続的財政構造の確立を目指すとした政府・日銀共同声明(→日銀は金融政策について政府との連携を飲み込まされる。背景には日銀が金融政策を正しく実行できるとは限らないことに衆目が一致したことが大きい。1998年の改正日銀法は日銀の独立性を高め、日銀は自らの主張を通すことを中央銀行の独立性の証明とみるようになった。その結果生じた政府との溝は結果として日銀への国民の信頼を失わせることにつながった。)
2013年3月 国債保有量125兆円
2013年4月 異次元金融緩和=量的・質的金融緩和を開始(CPIの前年比上昇率2%を2年程度で達成としていた 国債年50兆円残高増やす) ETF年1兆円ベースの購入開始
2014年10月 追加緩和(年約80兆円残高増やすETF年3兆円ペースに増額
2016年1月 マイナス金利導入決定

2016年7月 ETF年6兆円に増額
2016年9月総括検証 オーバーシュート型コミットメント(イールドカーブコントロール)導入(安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大を約束 長短金利操作政策導入 量から金利操作主軸に 柔軟対応 年80兆円ベースの拡大に限界 政策の軸足を資金量から金利に転換 長期金利をゼロパーセントと程度に誘導 2%目標+金融緩和の継続をうたいつつ事実上正常化を開始?→2017年 こっそり国債購入量を減らし始める(→ステルス・テーパリング) 

2018年3月 国債保有量450兆円 日本国債の約4割 2017年度末の国と地方の長期債務残高1093兆円 日銀保有ETF残高は約24兆円 購入時簿価19兆円 含みが5兆円  日本株全体の4%弱を保有 株価形成をゆがめ 日銀の自己資本8兆円を痛める恐れもある
2018年4月 黒田体制再任 経済・物価情勢の展望から(4月) 2%の目標達成時期の見通し明記やめる:緩和の長期化のサイン

2018年6月15日 黒田総裁 日本に残るデフレマインド(デフレ心理)

(ところで労働力不足対策として、外国人労働者受け入れの声が高まっている。それはよいが、外国人労働者受け入れ拡大が結果として賃金全体の伸びを抑えている。外国人留学生や技能実習生の増加が賃金の伸びを抑えている。政府は同じ誤りは前にもした。多様な働き方を認めるといって、非正規労働を拡大。結局は、正規労働が減り非正規が増えて、失業率は減ったが賃金は伸びないことになった。安倍政権は政府の政策が賃金の伸びの抑制、デフレ維持深化、を繰り返している。物価を上げると称して、多年にわたり金融緩和を続けた。その結果として確かに資産家は資産が膨らんだ。一般の賃金は低いままなので、貧しい人は貧しいままの社会になっている。結果として大衆品の価格は上がらずデフレが続く面がある。なお政府はネットを通じた販売価格の競争が、価格を押し下げる効果を問題にしている(アマゾンエフェクト)。商業店舗の機能(流通在庫保管 商品選択)がネットで代替され、家電がメーカーから直送され、人々が自宅で家具を組み立てることで、物流コストや生産コストは大きく下がり、商品の価格や家具の価格が劇的に下がる効果が生じている。おそらくこれは消費や生産の在り方が、ネットを中心としてものに変化してゆくことがもたらした変化。賃上げを望むのであれば、外国人労働者にも日本人並みの賃金を制度的に保証するべきであり、非正規労働者と正規労働者の間の雇用条件上の差別を禁止する方向を目指すべきであろう。)

2018年7月23日 金融政策変更の観測から金利上昇 円高・株安 日銀は半年ぶりに指値オペ(指定した金利で無制限に国債を購入)実施 長期にわたる大規模な金融緩和政策の(日本国内の)副作用とは①銀行収益が圧迫され金融仲介機能が低下していること(銀行が投融資においてモラルをダウンさせていること)。②保険や年金が運用難に陥っていること。③国債市場の機能低下(取引低迷)が続いていること ④国債発行コスト低下による財政規律の低下 ⑤ETF(上場投信)を買い続けているため株価形成がゆがめられていること ⑥資産価格高騰などバブルを誘発している懸念があること ⑦日銀の資本毀損リスクが高まっていること などである。
なお「過剰債務」の形成が問題にされることもある。仮説だが、この債務は国によって現れ方が違うかもしれない。日本の場合は国債として表れているが、中国では企業債務(→ゾンビ企業)、米国では家計債務(→住宅バブル)が話題になるのではないか?
運用難からリスクの高い企業に対して低い金利での貸し出しをふやしているのではないか。運用難からリスクの高い債券投資に向かっているのではないか。
2018年7月30日ー7月31日の金融政策決定会合年間80兆円をめどとしつつ弾力的に運用(実際は40兆円程度に縮小している) ポイント:0%程度に誘導す±0.1%程度になるよう誘導。今後は変動幅0.2%程度まで容認する(=長期金利変動幅拡大を容認 金利が動く余地作る意味 長期金利については従来以上の上振れを容認)+金融緩和の長期化(長短金利を低い水準に維持する約束)を意味する 政策金利についての新しいフォワードガイダンス(将来の指針)の導入・公表(当分の間 極めて低い金利水準を当面維持することを約束:引き締め効果とならないように配慮 2020年まで現在の長短金利を動かさない方針の明確化 物価安定目標の実現に対するコミットメント=約束をつよめ 長短金利操作付き量的質的金融緩和の持続性を強化 変動幅大きくすることで市場の取引・機能の改善はかる TOPIXに連動するETFの買い入れ額拡大)金利が急速に上昇する場合は迅速かつ適切に国債買い入れを実施 ETF購入の柔軟化

物価見通し下げ 金融緩和も回避 副作用に対応した事実上の正常化策

4つの政策手段の関係不明 量と質 マイナス金利と長期金利

2倍程度の変動ありということで国債を買いやすくなった

金融緩和の副作用について議論したうえで対処するべきだった

マイナス金利解除は2019年10月の消費税増税以後か

長期金利の変動容認を金融緩和の出口に向かう地ならしと受け止められないように配慮 物価上昇が鈍い理由を分析しつつ2%の物価上昇目標も維持 → 当面強力な金融緩和を続ける方針を堅持したが、目標そのものについての議論(物価上昇目標の硬直性を批判する意見は多い)や緩和策の出口についてといった本質的議論を回避 反面 長期的にもインフレ目標達成は事実上困難というメッセージ。なお年6兆円買っているETFについてはTOPIX連動型を増やすことで、批判に対応。

なお忘れた感があるのは財政の健全化。社会保障費の急増により財政の急激な悪化が見込まれている。2018年度を目標年度としてPB赤字をGDP比1%程度とするとしてきたが、しかしこれは達成できなかった。2018年度の同数値2.9%。2025年度を目標年度とする財政健全化計画では、債務残高のGDP比率を180%台前半まで引き下げる。PB赤字をGDP比率1.5%程度にする。財政収支の赤字をGDP比3%以内にする。これらの数値はいずれも甘く達成できそう。今後の要因としては2019年10月の消費増税。2020年の東京五輪。2022年度以降の団塊世代の後期高齢者(75歳)入りによる社会保障費(2018年度の予算総額の3分の1)急増がある。そのため後期高齢者の医療機関での自己負担割合を現在の1割から2割に引き上げることが見込まれているほか歳出の効率化が求められている。

8月2日 財務省による10年債の発行入札

8月6日 国債市場は乱高下。

8月13日 トルコショック 円高 日経平均株価大幅安 国債は買われて日本の長期金利は0.095%に低下 

2018年9月 2019年10月の消費税率上げに向けて経済対策を予想され 2014年4月の引き上げ時には5.5兆円の経済対策 国債増発が予想される 長期金利に上昇圧力
2018年9月20日 日銀総裁記者会見 長短金利操作付き量的質的金融緩和のもとで金融市場を調節するこれまでの方針の維持を賛成多数で決定した
2018年9月26日 米連邦準備制度理事会FRBはFOMC米連邦公開市場委員会で3ケ月ぶりの利上げを決定。FF金地の誘導目標を0.25%引き上げて年2.00~2.25%とする。2%超えるのは2008年以来ほぼ10年ぶり。今後の見通し。年内に1回。2019年に3回利上げの見通しも発表。2020年に1回。2021年はゼロ。国内景気動向に自信。利上げに踏み込めない日欧と対照的。
9月28日 日経平均終値 前日比324円高2万4120円 1月の年初来高値にあと4円 27年ぶりの高値圏(医薬品 小売など内需銘柄が牽引 非鉄 電機など半導体銘柄 FA関連銘柄 安い:米中貿易摩擦の影響)

2018年10月4日 3日の上昇のあと米株式市場反落 下げ幅3ケ月ぶりの大きさ 米経済の好調(賃上げ)→(利上げ圧力)米長期金利の急上昇 10月5日一時3.24% 7年5ケ月ぶりの高水準(同日朝の48年ぶりの低い失業率が背景)⇒ 国際的な暴落へ

 2018年10月11日(木) 米株式市場3日続落 7月23日以来の安値 アルゴリズム取引による機械的な売り 午後VIX指数が急上昇一時28超えた(株式売りを招く)
10月11日 トランプ大統領がFRB批判 株安の責任はFRBにあると。
10月12日 NY株 ダウ4ぶりに反発 アマゾン アルファベットなど大手IT銘柄はなお下落

2018年10月12日更新(2018年2月18日)
経済経営用語辞典 (異次元金融緩和の副作用 で採録)

Strategies  Case Studies   Area Studies

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